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[裁判員法成立]「施行前の改正も柔軟に考えよ」
国民が裁判官と共に刑事裁判に参加する制度を定めた「裁判員法」が成立した。
二〇〇九年までに司法参加を国民に義務づける裁判員制度がスタートすることになる。半世紀ぶりの司法改革の柱となる制度だ。
新制度では、無作為に選ばれた有権者が裁判官と共に、重大な事件について、有罪・無罪を多数決で決め、量刑も判断する。裁判官、検察官、弁護士だけで構成してきた刑事司法の大転換だ。
目的は、幅広い国民の社会常識を刑事裁判に反映させることだが、実現させるには、まだ多くの課題がある。
まず、裁判員となる国民の負担だ。罰則を伴う守秘義務を負わねばならず、長期の裁判に拘束される可能性もある。こうした負担を、いかに軽減し、参加しやすくするのか。
だが、裁判員法では、こうした問題について不明確なままだ。国会審議も、新制度の意義の議論が先行し、制度を機能させるための各論が積み残された。
裁判員法では、施行三年後に必要な見直しをすることになっている。
これに加え、参院での法案成立にあたって、「政府、最高裁は施行前においても、必要に応じて制度上の手当てを含めて適切に対処する」との付帯決議がつけられた。これは、施行前の見直しの必要性を意味する。
法の成立時に、施行前の見直しに言及することは極めて異例だ。裁判員法の現段階での不備を認めたものだ。
最高裁は「五年以内」の施行を前にまず、解決すべき問題を精査しなければならない。政府は、その過程で必要があれば制度の根幹も見直す、思い切った改正も考えるべきだ。
とくに、国民が裁判員を辞退できる場合の基準や、裁判員の守秘義務の範囲が明確ではない。
育児・介護に携わる人などに辞退が認められるほか、個人の思想や信条を理由に辞退できるような条項を政令で加えることになっている。この条項の運用次第で、辞退が広がる可能性がある。
これは、憲法の「思想や信条の自由」にもかかわる問題だ。政令ではなく、法改正で基準を明確にすべきことだ。
裁判員の裁判での負担を軽減するには極めて迅速な集中審理が行われなければならない。そのための刑事訴訟法の改正も不十分なままだ。
本紙の世論調査によると、裁判員制度ができても、参加したくない人は62%に達している。裁判員法は成立した。だが「身近な司法」を目指す改革は、これからが正念場だ。