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■裁判官の実感
四月上旬、最高裁の会議室である模擬裁判が非公開で開かれた。裁判官はもちろん現職だが、検察官も、弁護士も裁判官が担当。そして法律の専門知識がない一般職員六人が「裁判員」として加わった。
裁いた事件は、実際に起きた妻による夫殺し。審理と評議で計三日間かかった。検察官役の裁判官が、妻の捜査段階の供述調書を朗読した場面では、裁判員役の職員たちから「ポイントは?」「メモが追いつかない」との声が漏れた。
検察、弁護側双方がマネキン人形の胸の傷口を指し示しながら行った証人尋問は、裁判員役の職員たちから「分かりやすい」と好評の声が相次いだ。
最終日の評議。「何を基準にすればいいのか」。量刑を決めるのに戸惑う職員も。裁判長が「参考に」とこれまでの同種事件での“相場”を教えた。
結局、懲役十二年の求刑に対して、判決は懲役六年の有罪判決。検察側が主張した「確定的な殺意」は否定された。
「単純な事件でも、裁判員に理解してもらい、判断してもらうことが並大抵でないことがよく分かった」。最高裁幹部はこう振り返った。
■体質的な要因
裁判員制度をうまく機能させるためには「分かりやすい法廷」は至上命題だが、審理期間の短縮は大前提だ。
「一審は原則二年以内」の原則を掲げた裁判迅速化法の施行からもうすぐ一年。この目標を実現するため問題点の洗い出しが、昨年十二月から外部を含めた法律家や有識者らのアドバイスのもと最高裁で進む。
「長期化の要因には、戦後の刑事訴訟法の長い年月の中で生じた体質的なものがある」と現職の刑事裁判官の委員は指摘した。
現職の検察官の委員は全国の検察庁を通じて「二年超え裁判」の原因を調べたところ、「証人尋問や鑑定に時間を要したり、審理の空転が生じるなどの共通項があった」と紹介した。
裁判員制度の対象になる重大事件は、最高裁の二〇〇二年の統計では計約二千八百件に上る。七割以上は六回以内の公判で判決が出ており、こうした事件は連日開廷で、一週間以内に審理期間を縮めることが可能とされる。
だが、審理期間が二年以上と長引いている事件は全体の3%。一年を超える事件となると、15%もある。仕事や育児に忙しい会社員や主婦らが裁判に参加するには、「二年以内」ですら論外。審理の短縮ばかりが優先し、被告の権利が現行より後退することも許されない。
「気の遠くなるような準備作業だ」「コペルニクス的な発想の転換が必要だ」。準備に携わる法曹関係者からはうめき声さえあがる。
与党の司法制度改革プロジェクトチーム座長の保岡興治衆院議員は強調する。「裁判員制度の導入で刑事司法の全体が変わる。取り調べの様子の録音・録画も検討に値する。司法改革は広い視野で進めるべきだ」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040521/mng_____kakushin000.shtml