2004年05月21日(金) 02時57分
三菱自、欠陥8年間放置 クラッチ系の危険性認識 死亡事故を誘発(産経新聞)
三菱ふそうトラック・バス(昨年一月に三菱自動車から分社)のビルフリート・ポート社長は二十日、都内のホテルで記者会見し、大型車のクラッチ系統部品の欠陥を公表せず、八年間にわたって隠蔽(いんぺい)していたことを明らかにした。週明けにも国土交通省にリコール(回収、無償修理)を届け出る。同社は少なくとも平成八年に事故につながる危険性を認識していたのに公表せず、平成十四年に山口県で死亡事故を引き起こす結果となった。
リコール対象となるのは、昭和五十八年七月から平成八年九月にかけて約十七万台生産した大型トラック「ザ・グレート」のクラッチハウジングで、プロペラシャフトが過剰に振動した場合、クラッチハウジングに亀裂が生じて破損。プロペラシャフト自体の脱落やブレーキホース破損を招く恐れがある。
平成八年五月までに約三十件の不具合が報告され、同社は対策会議を開いたが、「放置すれば事故につながる可能性を認識していた」(ポート社長)にもかかわらず、リコールの届け出や国土交通省に対して報告を行わず、ひそかに販売店を通じて違法に不具合の修理を済ませていた。
プロペラシャフト脱落などの不具合は把握しているだけで平成四年以降、昨年九月までに約七十件発生。六年には神奈川県、十年には愛知県で人身事故、十四年十月には、山口県熊毛町(現・周南市)で大型トラックがコンクリート壁に激突し、男性運転手が死亡した事故が発生したが、その後も何の対策も行っていない。
ポート社長は会見で遺族に謝罪するとともに、「八年にリコールしなければならなかった。違法行為でリコール(情報)隠しにあたる。長年放置されてきたことに対し、激しい憤りを感じる」と述べ、さらに調査を進め、当時の関係者に厳しい懲戒処分を科すことを明言した。
また、欠陥隠しが発覚した理由について「社内で先週、内部告発があった」とした。
同社ではこのほか、大型トラックと観光バスのプロペラシャフト、観光バスの駐車ブレーキの計三件についても欠陥があったとして近くリコールを届け出る。
同社をめぐっては、横浜市の母子死傷事故で昨年十月、神奈川県警が三菱自本社を家宅捜索。三菱ふそうは今年三月、前輪ハブの欠陥を認めて約十一万二千台のリコールを表明した。その後、神奈川県警が五月、道路運送車両法違反容疑などで三菱ふそうの宇佐美隆前会長ら七人を逮捕した。
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≪ふそうを業過致死の疑いで捜査≫
山口県の死亡事故で、原因とされるクラッチ系統部品の不具合を認識しながら適切な対策を講じなかったとして、神奈川、山口両県警は業務上過失致死容疑などで三菱ふそうの捜査を始めた。
横浜市で十四年一月に起きた脱輪事故と同様、捜査当局はこの事故について、三菱ふそうの刑事責任を厳しく追及する。
問題となっているクラッチハウジングの欠陥による事故は、十四年十月、山口県熊毛町の県道交差点で発生した。
三菱自動車製の大型九トントラックが高速道路のインターチェンジを出た直後、中央分離帯を乗り越えて地下道出入り口のコンクリート壁に衝突。運転していた鹿児島県の男性=当時(三九)=が死亡した。
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クラッチハウジング クラッチを覆うカバー。金属製で円筒形をしており、エンジンと変速装置(トランスミッション)の間に位置している。
プロペラシャフト 棒状の金属製部品。エンジン側と、後輪の車軸の間を結び、回転しながらエンジンの駆動力を車輪に伝える。(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040521-00000000-san-bus_all