2004年05月18日(火) 19時41分

［ピックアップやまなし］おれおれ詐欺　手口が巧妙化、被害も高額に　／山梨（毎日新聞）

　◇警察官装う…本人確認妨害−−８カ月間で６２件、警察に相談を
　孫などを装ってお年寄りなどから現金をだまし取る、いわゆる「おれおれ詐欺」の手口が多様、巧妙化している。警察官を装ったり、電話してきた男が「家族本人」なのかの確認を妨害する——。県警は昨年１２月、合同捜査本部を設置し、１３人を恐喝や詐欺の疑いで逮捕した。今年に入り被害件数は減っているものの、１人当たりの被害額は増えている。手口の特徴を知り、自衛対策を講じる必要もありそうだ。【鷲頭彰子】
　◆発生状況
　県警によると、県内では昨年５月から「おれおれ詐欺」の被害が表明化した。
　５月６件▽６月３件▽７月４件▽８月７件▽９月１８件▽１０月９件▽１１月８件▽１２月７件——と昨年の８カ月間で６２件に上り、被害総額は計４８２９万円に達した。
　県警は昨年１２月に合同捜査本部を設置し、捜査に乗り出してからは発生件数は徐々に減少。今年に入ってから４月までの４カ月間の発生状況は月３件程度に減った。
　しかし、被害総額は今年度に入ってからすでに１６６２万円に達しており、１件当たりの被害金額を単純に計算すると、昨年度は７８万円だったのに対し、今年度は１２８万円と高額化している。交通事故という設定の場合、破損させたとする乗用車の種類にベンツなど高級外車の名前を挙げ、高額な示談金を要求する。
　昨年５月から今年４月までの１年間で、年齢別で被害が多いのは７０代がトップで３０件。全体の４０％を占めており、８０代１６件（２１％）▽５０代１２件（１６％）▽６０代９件（１２％）——の順。被害者は女性が多く、全体の６９％を占める５２人だった。
　昼間に家にいるのは女性や老人が多いことが一つの原因として挙げられる。
　◆手口の変化
　当初は孫などを装って交通事故の示談金や借金の返済金名目でだまし取る手口だった。しかし、昨秋からは家族を監禁したように装って電話し、現金を脅し取る手口に変化。例えば息子を装った男の泣き声で「借金が返せない」などと助けを求め、別の男が電話口に出て「金を払わないと息子がどうなるか分からないぞ」と脅すようになった。
　２月には塩山市の主婦（３９）に「あなたの夫が交通事故を起こし、運転していた妊婦が流産しそうだ」と警察官を装った男が電話をかけ、示談交渉を買って出るという新しい手口も現れた。
　県外の別のケースでは、相手の電話口からは通行車両の音が聞こえ、まさに事故現場から電話しているかのようなシチュエーションさえ演出した。
　◆巧妙化
　県警は地域の有線放送や県警のミニ広報誌などを使って、住民に注意を呼び掛けているが、犯人グループはその上を行く。４月には中富町に住む無職の男性（６３）宅に、長男役の男が泣きながら「おれだけど、借金が返せなくて東京に連れて行かれるところだ」と電話をかけてきた。その後、別の男が電話口に出て郵便口座に８０万円振り込むよう指示。男性は不審に思い長男の携帯電話に電話したが、つながらなかったため、男たちの話を信じ、指定された口座に入金。その後に長男と連絡が取れ、だまされたことが分かった。
　長男は何度も無言電話がかかってきたため携帯電話の電源を切っていたという。県警は、漏えいされた個人情報などから長男の電話番号を事前に手に入れ、連絡を妨害したとみて調べている。
　他県では犯行前、携帯電話会社に契約者を装って解約や紛失などによる通話停止を申し込み、被害者が確認の電話をしても通話できないよう事前準備をしたケースもあるという。
　◆対策
　犯人グループが振込先に指定する金融機関の口座は、ほとんどが県外ばかり。合同捜査本部が逮捕した１３人も東京都など県外から電話をかけてきているなど、「おれおれ詐欺」に県境はない。県警は全国の都道府県警や金融機関などと連携を取り、「おれおれ詐欺」に使われている口座を凍結している。
　犯行時間は息子や夫が出勤した午前中から金融機関が閉まる午後３時前まで。警察に通報されて振込口座を凍結されないように、銀行に着いてお金が用意でき次第、携帯電話などに電話させ、その時に口座番号を伝えることも多いという。
　捜査担当者は「現金の振り込みを求める電話がかかってきたら、本人の携帯電話につながらなくてもあきらめず、勤務先などに確認の連絡を取ることが必要。警察にも遠慮なく相談してほしい」と話している。（毎日新聞）

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040518-00000002-mai-l19