悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。
また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。
[ウィニー摘発]「ネット社会に警鐘を鳴らした」
著作権侵害の違法コピーが横行するインターネットの世界に警鐘を鳴らす摘発である。
京都府警に著作権法違反ほう助の疑いで逮捕された東京大大学院助手は、映画や音楽などのファイル交換ソフト「Winny」(ウィニー)の開発者だ。
このソフトの利用者が、著作権者の許可なく、映画などをネット上で不正に公開した違法行為を手助けした、という容疑である。ソフトの開発者が逮捕されるのは、世界的にも異例のことだ。
ウィニーはネット上で無料公開され、利用者は国内で数十万人いる。どこから送受信されたのか、特定しづらく、匿名性が高いため、関連業界が「違法コピーの温床」と指摘していた。
助手が、利用者の悪用をどこまで認識して、ソフトの開発や改良に当たったのか。今後の捜査の焦点である。
助手は、作品の制作者の利益が十分に保障されていない著作権のあり方に疑問を感じていたという。調べに、「著作権違反を蔓延(まんえん)させるため、ソフトを作った」と、あえて問題提起したという趣旨の供述をしている。ネットの掲示板で使用を呼びかける書き込みもしていた。
助手の行為は、確信犯的で、極めて無責任である。
ただ、映画や音楽、ゲームソフトなどの違法コピーが氾濫(はんらん)する現状は、助手一人を逮捕しても解決にはならない。
ウィニーによる被害は抑えられても、同様のファイル交換ソフトは国内だけで十数種類ある。米国では、開発者の違法性を問えないという判決も出ている。
映画や音楽CD、ゲームソフトなどの関連業界が、違法コピーを封じる保護の仕組みを築くことが先決だ。
著作権という大事な財産を守るには、家にカギをかけるのと同様に、自ら対策を講じなければならない。だが、違法ソフトの開発といたちごっこで、防止措置が破られる例も少なくない。セキュリティー技術の向上も急務だ。
事件は、一般の利用者にも警告を発している。自分が制作した音楽や映像、写真などを交換する分には問題はないが、著作権で保護された作品のやりとりは法に触れ、刑事罰の対象になることを改めて認識したい。
警察官などがウィニーを私物のパソコンに取り込んだため、京都府警や北海道警の捜査報告書が、ネット上に流出してしまうという事態も起きている。
個人のパソコン間でデータをやりとりできるソフトは、ビジネスにも活用されている重要な技術だ。不正を排し、健全に発展させる必要がある。