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2004年05月11日(火) 00時00分

違法ソフト 著作権と技術の両立を 東京新聞

 映画やヒット曲をインターネット上で交換する人気のファイル共有ソフト。これを開発した東大助手が逮捕された。違法性が薄いとして逮捕への疑問の声もあるが、社会への影響は無視できない。

 問題のソフトはWinny(ウィニー)と呼ばれ、京都府警などの警察官が私用で利用したパソコンからコンピューターウイルスによって捜査資料を外部に流出させたことで有名になった。

 一般的にファイル共有ソフトは、資料やデータをネット上でコピーし合うためのもので、資料やデータに違法性がなければ、使用に何ら問題のない便利なソフトだ。

 これまでにもさまざまな共有ソフトが開発されている。しかし、ウィニーは交換する情報が暗号化され、使用者が判明しにくいよう意図的に匿名性を高めてあるのが特徴で、違法複製にもってこい、として世界的にも有名になってしまった。

 逮捕された助手は自分のホームページから無料でダウンロードできるよう公開し、パソコン雑誌が利用方法を特集するなどしたため、普及に拍車を掛けた。それも、ソフト自体に違法性はないとみられたためだ。

 野球のバットや料理用包丁と同じで、包丁が犯罪に使われることがあったとしても、その製造者が罪に問われることがないのと似ている。

 しかし、京都府警は助手がウィニーの作成段階から匿名性を高めることに力をそそぎ、ホームページで誰でも利用できる形で公開したことを重視、もともと違法複製に利用されることを承知で提供していたとみて、ほう助容疑で逮捕した。

 助手はこれまで、ウィニーの公開で、ネット社会と著作権のありかたを変えたいとの希望をネットなどで明らかにしていたことから、違法性の有無を法廷で争う可能性も残っている。

 日本レコード協会などは、これまでウィニーなどファイル共有ソフトの取り締まりを強く求めていた。だが、事件の背景には著作権が強く守られるあまり、せっかくのネット技術の進歩にもかかわらず、自由に映画や音楽の配信を行いにくい法やシステムの遅れという実態もある。

 ファイル共有ソフトの人気は高く、違法性をつめないままに、ウィニーに代わるソフトがいまでも次々と雑誌などで紹介されている。制度の不備を放置する限り、ソフトの作者を逮捕するだけでは、いたちごっこだ。ソフト利用者の確認と著作権料回収が確実にでき、ネット上で安価な映画や音楽の鑑賞ができる制度づくりを急ぐことが必要だろう。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040511/col_____sha_____003.shtml