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個人情報の相次ぐ流出事件で、企業は顧客への対応に大わらわだ。だが、償いの仕方は企業によってまちまち。個人情報の適正価格はいくらなのか、だれもが計りかねているのが現状のようだ。
■¥500
首都圏に住む20代のシステムエンジニアの男性は、「ソフトバンクBBに集団訴訟を」と呼びかけるホームページを運営している。
インターネット接続サービス「ヤフーBB」の元会員は、契約者の個人情報流出事件で、「自分も被害に遭った」と思った。ホームページを立ち上げたのは、サービスを統括するソフトバンクBBの孫正義社長が会見した当日。ネットで知った会見内容に疑問を持ったからだ。
同社は、全会員と流出した元会員に500円相当の郵便振替支払通知書を送ると決めた。500円という額について「明確な論理で決めたわけではない。過去のケースなどを参考に、当社の体力を踏まえて決めた」と説明する。
だが、男性は「情報管理がずさんだったのに、500円で済まそうという態度が許せない。ソフトバンクの責任を問う訴訟にしたい」と話す。参加希望者は現在数十人。世話人として年内提訴をめざす。
東京都に住む会社員の女性(53)宅には4月、サントリーから封筒が舞い込んだ。
02年のキャンペーンに応募した顧客の氏名、住所、電話番号など5項目が流出したというおわびの文書に、500円の郵便小為替が添えられていた。「誠に些少(さしょう)ではございますが、お納めいただければと存じます」
「これだけで話を終わらせるつもりかしらね」と女性は首をかしげた。
東武鉄道が用意したのは、東武ワールドスクウェアなどの入場券2枚で、最大5000円分。情報流出の可能性があるのは13万2000人だが、全顧客15万人に送付した。ローソンは「店に来てもらって直接おわびを言えるように」と500円の商品券を特注して配った。
顧客全員に金券を送ることは断念した、消費者金融大手の三洋信販の例もある。「契約時に自宅へ連絡しないよう登録しているお客様が多数いた」からだ。
ただ、流出情報に基づくと見られる架空請求書が約2万4000人に届き、約300人が支払ったとされる。「その方々については、金銭補償も含めて個別にご相談させていただいています」
■¥10,000
一方、裁判例では、住民基本台帳のデータが大量流出した京都府宇治市の例など、慰謝料額は1人1万円が「下限」だ。
エステティックサロン大手のTBCから、個人データ約5万人分が流出した事件では、データにスリーサイズが含まれていたり、ネット上に情報がさらされたりしたこともあり、14人が1人100万円の慰謝料などを求めて提訴している。
原告弁護団長の紀藤正樹弁護士は「慰謝料額があまりに低いと、司法上の救済が事実上閉ざされる。高額化する方向で見直すべきだ」と訴える。
■¥4,000,000,000
流出情報をもとに恐喝未遂の被害に遭ったソフトバンクは「あまりに高額な賠償金を課すと、恐喝が容易になるおそれもある」と警戒する。通知書送付の実費とセキュリティー対策費を合わせ、現段階の出費は約40億円に上るという。
損保ジャパンが3月、日本で初めて発売した「個人情報取扱事業者保険」は、1カ月で17件が成約した。同社関連の危機管理コンサルティング会社は「賠償がより高額になれば、訴訟参加者はうなぎ登りに増える」とリスクの増大を予想する。(05/08 13:04)