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2004年05月07日(金) 01時49分

5月7日付・読売社説(1)読売新聞

 [三菱ふそう]「企業体質が問われる前会長ら逮捕」

 企業体質に、根本的な問題があるのではないか。自動車メーカーとして、長年にわたり欠陥を隠し、危険を放置してきた責任は、あまりに重大である。

 横浜市で一昨年一月、三菱自動車製大型車のタイヤが脱落、歩行中の母子三人が死傷した事故で、同社の当時の副社長や常務が逮捕された。

 タイヤと車軸をつなぐハブと呼ばれる部品に、破損しやすい構造欠陥があるのを認識しながら、国土交通省には「整備不良」と、虚偽の報告をしていた道路運送車両法違反などの容疑である。

 この元副社長は、昨年一月に分社化された三菱ふそうトラック・バスの会長に就任するなど、大型車部門の責任者だった。元副社長を頂点に組織的な虚偽報告がどのような経緯で行われたのか、捜査当局には全容の解明を期待したい。

 ハブの破損によるタイヤ脱落は、横浜の事故まで十年間に、トラックやバスで三十三件も起きていた。横浜の事故直後に設置された社内の調査チームはサンプル調査で、十分に整備した大型車の三割からハブの亀裂を見つけていた。

 しかし、国交省が報告を求めたり、立ち入り検査をした際、三菱自動車は「適切に点検整備していればハブの破損は防げる」との説明を繰り返してきた。

 初期の段階で原因を徹底究明し、国交省にリコール(無料回収・修理)を届け出るなど、当然の対応をしていれば、横浜の悲劇も防ぐことができ、刑事事件にはならなかったのではないか。

 脱落事故のたびに、整備業者などに責任を転嫁してきた。提携を強めていたダイムラー・クライスラーとの関係に配慮したのか、企業イメージの悪化を恐れたのか。動機が何であれ、顧客に顔を向けた経営をしていなかった。

 三菱自動車は二〇〇〇年にもリコール隠しで摘発されている。この事件を機に虚偽報告などの罰則も強化されたが、それでも同じ愚が繰り返された。

 経営難に陥っている三菱自動車は、再建計画づくりを急いでおり、三菱ふそうは品質管理部門を抜本改編し、信頼回復に取り組むとしている。顧客重視、安全重視の意識を徹底させることができなければ、変化は難しい。

 国交省の対応にも問題がある。三菱側の主張のままに、トラックやバス業界に整備の確実な実施を求めてきただけだった。立ち入り検査も、形式的なものでは意味がない。早い段階で行って、リコールを迫ることはできなかったのか。

 欠陥車は、運転者にも歩行者にも凶器となる。そのことを、メーカーも国交省も再認識すべきだ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040506ig90.htm