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2004年05月05日(水) 00時00分

「おれおれ詐欺」県内で急増の陰に “口座屋”が暗躍 おれおれ詐欺などの注意を呼び掛ける張り紙=津市岩田の百五銀行本店で 東京新聞

 県内で被害が増える一方の「おれおれ詐欺」。子や孫を装う手口が新手なら、事件に使われた口座が多数の転売を経ているため、詐欺実行犯の摘発を困難にさせている点でも、新型の犯罪といえる。県警は、紀伊長島町の七十代男性が昨年、百七十万円を詐取された事件を懸命に捜査中。だが、通帳と印鑑、キャッシュカードの三点セットを密売して稼ぐ“口座屋”が複雑なネットワークを形成し、捜査の進展を阻んでいる。(小嶋麻友美)

 ■倍々ゲームで

 「あんたの名義で通帳を作ってくれ。印鑑、キャッシュカードとセットで、一万円で買ってやる」。昨年十月、無職松原忠義被告(61)=横浜市=は、知人の喫茶店経営石渡正被告(43)=同=に持ち掛けた。

 石渡被告は千円程度の入金で口座を開設。松原被告はそれを一万円で買い、十年来の友人の携帯電話販売業恩田重信被告(41)=栃木県烏山町=に二万二千円で転売。恩田被告は、同業の仲山慧被告(61)=東京都=に三万八千円で売った。

 倍々ゲームで転がされた口座は、石渡被告名義のまま仲山被告が転売。最終的に、何者かが紀伊長島の事件で詐取金の振込先にした=図参照。

 ■流れの先は闇?

 県警は、口座名義人の石渡被告を端緒に転売ルートを追跡。知人つながりの口座屋四人が逮捕、起訴されたものの、仲山被告の転売先はまだ、詐欺の実行犯ではない模様だ。「実行犯まで知人、知人で単純につながっているとは考えにくい」と県警幹部は言う。

 調べでは松原、石渡両被告は、六十件余の不正口座を開き、恩田被告に売った。しかし、恩田被告は「松原ルート」以外にも入手経路を持ち、約九十口座を仲山被告に転売。仲山被告も他に複数のルートから口座を買っては売りさばいていたとみられる。今回の口座の流れを追い続けても、どこかで闇に紛れる可能性が高い。

 ■凍結や解約も

 おれおれ詐欺などでの不正口座の横行をふまえ、金融機関側は警察からの連絡などで不正使用が分かれば、口座の凍結措置を取るようになった。全国銀行協会によると、昨年四−十二月に利用停止となった口座は九千四百件、強制解約は七千八百件を数える。

 だが、おれおれ詐欺では通常、実行犯側は口座を多数用意し、一回の犯行で使い捨てする。このため、不正使用が分かった時にはもう遅い、との懸念も。百五銀行営業統括グループは「本当に犯罪に使われたのか慎重に確かめる必要があり、口座の凍結までには時間がかかる」と話す。

 ■4カ月で昨年分

 県警のまとめでは、今年一−四月におれおれ詐欺は四十七件(うち未遂四件)発生。昨年一年分の四十五件(同二件)を既に上回る急増ぶりだ。四カ月の被害額は計五千二百万円に上り、最高で一人四百三十万円をだまし取られている。

 金融機関側はポスターで警告し、多額を振り込もうとするお年寄りに行員が声を掛けているが、プライバシーの問題が絡み、むやみに干渉できない悩みもある。県警は「お年寄りのいる家庭では、おれおれ詐欺について日ごろから話題にして」と話している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/mie/20040505/lcl_____mie_____000.shtml