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[年金担保融資]「お年寄りの被害を放置できない」
年金は、高齢者の生活の支えである。その大切な資金を担保に取る違法融資の横行を、これ以上、放置できない。
大阪、兵庫、広島、福岡に住む被害者が、貸金業者を相手に損害賠償請求訴訟を起こした。被害に遭っているのは、年金受給額が少なく、生活費や医療費などが必要な高齢者だ。
業者は「保証人はいりません。すぐ貸します」と持ちかけ、年金証書や通帳などを担保として預かり、年金が振り込まれる口座を管理する。口座から、弁済金などの名目で勝手に資金を引き出す一方で、追加貸しをする。膨らんだ借金の額を知らないお年寄りもいる。
被害者の生活は悲惨だ。食事の回数を減らし、病院にも行けない。破産やホームレス生活に陥った人も出ている。
被害者対策に当たる弁護士などによると、年金担保融資の債務者は全国で十万人以上に上るという。お年寄りの生活を脅かす業者を締め出す仕組みを、一刻も早く整備する必要がある。
一月に施行された改正貸金業規制法で年金証書を担保に融資した業者は、業務停止や登録取り消しといった行政処分の対象になった。だが、これまでのところ処分された例はない。
国民年金法や厚生年金保険法も、年金に担保を設定する行為を禁じているが、被害者本人がそうした法の定めを知らない場合が多い。業者を監督すべき都道府県の認識も甘く、十分な手を打っていない、という問題もあるようだ。
都道府県と監督官庁の金融庁は、弁護士会や社会保険事務所などとも連携して積極的に情報を収集し、違法業者の排除に努めるべきだ。
改正貸金業法などで、脅迫的な取り立てや法定金利を超える違法金利に対する罰則は強化されたが、年金を担保にした融資に対して刑事罰の規定はない。
発覚しても行政処分だけ、という意識を業者に持たせていることも、違法融資が後を絶たない要因である。刑事罰の規定新設が、今後の検討課題だ。
公的な年金担保融資は、独立行政法人の福祉医療機構が実施している。だが、審査期間が一か月と長く、返済は年金の全額ないし半額を差し引く形で行われるなど、使い勝手が悪い。
これにも悪質業者がつけ込む。東京で昨年秋、高齢者に金を貸し付けた上で、融資を受けさせ、そのまま業者への返済に充てさせる事件があった。
審査期間の短縮や、生活が可能な年金を残して返済できる方法などの改善を急ぎたい。公的融資の厳正な運営も、年金受給者の被害をなくすために重要だ。