2004年05月02日(日) 03時05分
オンラインゲーム侵入、少年の摘発相次ぐ(読売新聞)
インターネットを通じて手軽に楽しめ、人気の高いオンラインゲームに不正接続したとして、少年らが摘発されるケースが相次いでいる。
熱中するあまり、ゲーム中の他人の武器などが欲しくなったという短絡的な動機がほとんどで、富山県警に3月初め、不正アクセス禁止法違反容疑で補導された福岡県内の男子高校生(16)は「ゲーム上のことなので警察は捜査しないと思った」と供述。仮想世界で遊ぶ現代の若者たちの未熟さ、危うさを浮き彫りにしている。
富山県警の調べによると、男子高校生は昨年8月、同県内の男子大学生(22)のIDとパスワードを使い、オンラインゲームに不正アクセスした疑い。大学生が自分のキャラクターの装備品がなくなるなどしていることに気づき、事件が発覚した。高校生は中学生のころからオンラインゲームに熱中。ほぼ毎日3時間以上、多い日には半日以上コンピューターの前で過ごしていたという。
オンラインゲームは、複数の会員がインターネットを通じて同時に接続して遊ぶゲームで、架空の冒険や物語を体験できる。高校生が不正アクセスしたのは、国内登録件数延べ約55万件の人気ゲーム。ほかにも多くの種類があるが、いずれもゲーム上のお金で、戦いに必要な剣や盾などの武器や装備を売買でき、自分が操るキャラクターの能力を高めていく楽しさが人気の秘密とされる。
入手が難しい武器や装備品になると、インターネットを通じて実際に、数万円で売買されるケースもあり、警察関係者は「犯罪を助長する要因」と指摘する。
国家公安委員会などの統計によると、不正アクセス禁止法違反の検挙者に占める未成年者は、2001年が51人中2人、2002年が68人中6人、昨年が76人中16人と、人数、比率とも伸びている。
福岡の高校生の場合、インターネットの掲示板で、男子大学生がゲームへの接続方法が分からないとアドバイスを求めているのを知り、「自分が試しに接続してみる」と持ちかけたところ、大学生がすぐにIDとパスワードを教えてくれたという。
「最初は興味本位だった。まさか本当にアクセスできるとは思わなかった」。高校生はそのまま大学生になりすましてゲームにアクセス。次第に大学生がゲーム上で操るキャラクターの武器や装備がうらやましくなり、勝手に自分のキャラクターの装備品にするなどしていた。
同じゲームを巡っては、東京都内のアルバイト男性(20)も3月、北海道警に同法違反容疑で逮捕され、その後の調べで、18—19歳のころにも他人のキャラクターの武器など124種類、約2万点を盗み、一部を実際に売るなどしていたことがわかった。
オンラインゲームの運営会社では、不正アクセスやゲーム上の装備品の現金取引などを常時監視し、不正利用者には警告を発している。しかし、現状では「利用者の良心に依存する部分が大きい」という。
精神病理学者の野田正彰・関西学院大教授は「相手に迷惑をかけているという発想がない。情報の交換だけの関係で、犯罪やいたずらをしているという自覚もなくなっている」と指摘している。
◆不正アクセス禁止法=他人のコンピューターに侵入するハッカー行為を規制する目的で、2000年2月に施行。セキュリティーホール(安全対策の盲点)を突いたり、他人のIDやパスワードを読みとったりして、利用権限のないコンピューターに接続した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となる。IDなどを利用者以外に漏らして不正アクセスを助長する行為にも30万円以下の罰金が科せられる。(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040501-00000013-yom-soci