2004年05月01日(土) 03時05分
<BSE対策>対象外の肉骨粉に補助金1億5000万円(毎日新聞)
国のBSE(牛海綿状脳症)対策の一環として家畜の飼料となる肉骨粉の製造・焼却費を補助する制度を巡り、飲食店から出た天かすや残り肉などを「肉骨粉」として申請するなどした兵庫県の油脂製造会社に対し、農林水産省が業界団体を通じて補助金計約1億5400万円を不適正に支出していたことが30日分かった。農水省などは「業者側は意図的ではないが制度の対象外」と判断、会社側も補助金の返還に応じるという。背景に補助制度の不備や、申請の真偽を事実上チェックできない実態もあるとみられ、農水省は制度改善の検討を始めた。
BSE対策では、国産牛肉の買い上げ制度を悪用した雪印食品(解散)や大阪府食肉事業協同組合連合会などの詐欺事件が起きているが、肉骨粉での問題発覚は初めて。
この会社は、飲食店などから使用後の油や料理の残り肉などを回収。油と搾りかすに分類し、それぞれ飼料用に販売している。肉骨粉は本来、精肉過程で出る骨や内臓などが原料で、消費段階で出た肉は対象外。農水省などは4月、「兵庫県の会社が対象外の申請をしている」との情報をもとに同社を調査していた。
調査結果によると、同社は補助事業が始まった01年度から03年度にかけ計200トンの残り肉などを兵庫県内の焼却場で処分し、「肉骨粉」として業界団体の「日本畜産副産物協会」(東京都)に補助申請。補助金約9700万円が支払われた。
同社はさらに、本来は「肉骨粉」に当たる牛や豚などの脂身の残りかす約1000トンを補助額の高い「肉粉」と申請。農水省は、肉粉と肉骨粉の補助金の差額など約5700万円の返還も求めた。
同社によると、補助申請の前に兵庫県の担当者を自社工場に呼び、「肉骨粉」と「肉粉」の製造工程を説明し、了承を求めたという。県は「事業の概要を説明しただけで、判断はしていない」と話している。
肉骨粉について農水省通達では、精肉段階で出たものに限定することや製造方法、材料などが明記されていない。このため同省は、今回のように残り肉などが「肉骨粉」と解釈される余地があったと判断、「意図的に補助金を詐取したものではない」と結論付けた。同社の会長は「見解の相違があったが、決して故意ではない。指導に従い補助金を返還する」と話している。
▽佐藤一雄・農水省食肉鶏卵課長の話 肉骨粉に該当するかどうかを判断するのは国だが、補助対象について具体的な定義がなかったため、解釈の余地が生じた。今後、定義を明確にするなど、同様のことが起こらないよう対策を講じたい。
【ことば】BSE対策事業 国産牛肉の買い上げのほか、肉骨粉の製造・焼却に対する「肉骨粉適正処分緊急対策事業」がある。この事業は牛などの飼料になる肉骨粉や、ペットフードに使う肉粉を流通させないことを目的に始めた。牛のほか豚やニワトリなどの肉骨粉もあるが、現在、ニワトリは補助対象から外れている。
◇チェック甘さ、不正温床に=解説
兵庫県の油脂製造会社が、BSE(牛海綿状脳症)対策対象外の「肉骨粉」で補助金を受け取っていた問題の背景には、肉骨粉などの定義が明確でないほか、これまでの牛肉偽装事件と同様、チェック体制の甘さが指摘できる。
雪印食品(解散)などの偽装事件では、倉庫業法に定める営業倉庫発行の在庫証明書が「国産牛」と表記してあれば、買い上げが認められた。これに対し、肉骨粉の場合、補助金申請で、製造日報のほか焼却証明書が必要だが、実際には、焼却場でのチェックもなく、別のものを混ぜて焼却しても分からない。原料の入荷状況を示す帳簿も事業所での保管を定めるだけなので、業界にも不備を指摘する声がある。
肉骨粉などの補助制度は、02年度と03年度に計182事業所が利用した。02年1月の雪印食品事件を機に、03年度までに68カ所を現地調査したが、農水省の調査はあくまで任意。表面化していない問題が存在する可能性は否定できない。(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040501-00000139-mai-soci