2004年04月29日(木) 14時02分
再開へ予想以上の風当たり 丹波町の鳥インフルエンザ(京都新聞)
4月22日夜、兵庫県姫路市の料亭で、前日保釈された浅田農産の浅田秀明社長(41)=家畜伝染病予防法違反の罪で起訴=に、同社代理人の水田博敏弁護士が語りかけた。「厳しい状況だが、やる気があるなら会社を続けてみたらどうか」
浅田農産は、鶏舎改良などで四十数億円の負債を抱える。しかし年間で50億円以上を売り上げ、経常利益は2億円近くあった。浅田社長の逮捕前、水田弁護士は「5農場の全鶏177万羽を処分し、規模を小さくしてやり直したら」と提案した。処分費1億円を用意、兵庫県や県養鶏協会を通じ、全国の食鳥処理業者に食肉として引き取りをはたらきかけた。
「どうなっているんですか」。引取先が九州の業者に決まりかけた3月中旬、九州のある県の担当者から、浅田農産に問い合わせがあった。県は鶏の安全性を問い、結局、業者は引き取りを拒否した。「船井農場以外の鶏には関係ないんだが」と水田弁護士は苦り切った表情で振り返った。
感染発覚後、卵の出荷は止まり、鶏の引き取り手もなく収入が絶たれた。一方で、えさ代や従業員の人件費など1カ月で約2億円の経費が会社にのしかかった。今月初め、姫路市の浅田農産本社で水田弁護士は、飼料会社の担当者からエサ代の手形決済を求められた。「不渡りを出せば大変だ。今後の支払いは現金に切り替える」と応じた。約2億円ある銀行預金が引き出せず、同社保有のゴルフ場会員権などを売却、全羽処分までのえさ代は確保できた。
鳥インフルエンザ感染に見舞われた養鶏場は、いずれも再開の壁に突き当たっている。山口県の養鶏場は1月に感染し閉鎖。農場長だった藤村登さん(63)は、経営者からこう伝えられた。「取引先から『鶏舎を新しくしないと卵は売れない』といわれた。しかし資金がない」
今月上旬、希望をつなぐ電話があった。「銀行や飼料会社と協議した。可能性は5分5分だが、再開できるかもしれない。その時は戻ってきてほしい」。養鶏場は、家伝法に基づき損失補てんを受けた。しかし、藤村さんに再開の知らせはまだない。
保釈後、浅田社長はかつての得意先に電話をかけて回った。「再開したらもう1度取引してもらえないか」。結果は芳しくなかった。水田弁護士は「浅田への風当たりは、予想よりもはるかに深刻。失った信頼を取り戻すのは相当に困難だろう」とうめいた。(おわり) (京都新聞)
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