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[裁判員法案]「参院での再修正を考えよ」
国民が重大な刑事裁判に参加する仕組みを定める「裁判員法案」が、全会一致で衆院を通過した。
今国会中に法案が成立するのは確実で、二〇〇九年までに、国民の参加を義務付ける裁判員制度がスタートする。
この新制度では、無作為に選ばれた有権者が裁判官と共に、多数決で有罪・無罪を決め、量刑も判断する。「身近な司法」を目指す、半世紀ぶりの司法改革の柱とされ、将来の刑事司法の根幹となり得るものだ。
裁判員となる国民の負担は大きい。新制度が定着するかどうかはまず、いかに国民が参加しやすく、その負担を軽減できるかに、かかっている。
自民、公明、民主の三党の修正協議で裁判員法の施行前に、国民がより参加しやすい環境の整備に努めることと、施行三年後に必要な見直しをする規定を盛り込んだ。当然のことである。
政府案では守秘義務を守らねばならない裁判員が、これに違反した場合、「一年以下の懲役または50万円以下の罰金を科す」としていたが、これも三党協議で修正された。
懲役を「六か月以下」に軽減し、職務終了後の裁判員は、職務上知りえた秘密を漏らすなど悪質な場合を除き、原則、罰金にとどめた。一定の前進である。
しかし、国民参加についての衆院の審議は、限られた範囲にとどまった。どんな場合に、裁判員を辞退できるのかなどなお不明確な問題は多い。大事な課題が積み残されている。
政府案では、辞退が認められる対象に高齢者や学生、育児・介護に携わる人、「従事する事業で著しい損害を生じる恐れのある人」などをあげている。
さらに、個人の思想や信条を理由に辞退できるような条項を政令で加えることにしている。条項の運用次第で、無制限に辞退が広がる可能性がある。そうなれば、幅広い国民の社会常識を裁判に反映させるという新制度の趣旨は損なわれ、不公平感も生じよう。
だが、この問題が、衆院では与野党の修正協議の対象にならなかった。「思想や信条の自由」という憲法にかかわる問題であり、本来、政令で決めるべきことではない。
裁判員制度では、裁判員の負担を軽減するため、極めて迅速な集中審理が前提になる。それを可能にする刑事訴訟法などの改正も不十分だ。
衆院を通過した裁判員法案には問題が多い。参院では、それを十分審議し、必要なら再修正に踏み切るべきだ。