2004年04月24日(土) 14時42分
化粧品DHCの偽造株券出回る、「近く上場」話で売る(読売新聞)
通信販売で業績を伸ばした未上場の化粧品メーカー「ディーエイチシー」(DHC、東京都港区)の株券が偽造され、全国で少なくとも2000株近くが出回っていることが分かった。
偽造株券は、「急成長のDHCが近く上場する」という噂(うわさ)とともに売られていたという。
偽造株券を売りさばいていた男たちは、DHCをだまして同社会議室を借用、「株券は本物」などと説明し、集まった海千山千の株取引ブローカーらを信じ込ませていた。警視庁では、背後に組織的な偽造グループがいるとみて、捜査を進めている。
本物の株券は、旧社名で「株式会社大学翻訳センター株券」と表記されているが、偽造されたものは「株式会社ディーエイチシー株券」と記されている。
関係者によると、偽造株券は昨年春ごろから出回り始めた模様だが、同年8月20日、東京・六本木のビル内のDHC翻訳・通訳事業部の会議室で行われた「説明会」以降、大量に目に付くようになったという。
出席者らによると、この説明会は、購入した株券の真贋(しんがん)に疑問を抱いたブローカーらが、株券を大量に売りさばいていた男に説明を求めたことから開かれ、約10人のブローカーらが参加した。
冒頭、DHCの男性社員が会社の業務を説明。社員が退室すると、次に、同社の「常務」を名乗る女性が登場し、「皆さんがお持ちの株は本物です」と太鼓判を押したという。説明会は40分ほどで終了したが、「女性常務」は株券が本物であることを繰り返し、集まったブローカーらを安心させた。
DHCによると、同社の業務内容を説明したのは確かに同社の正社員だった。しかし、この社員は、説明会を主催した男から「大学の記念行事に合わせて翻訳本を出版する。翻訳はDHCにお願いするので、出資者のために、会社の業務を説明してほしい」と持ちかけられ、翻訳・通訳事業部の部屋も貸したという。
同社は後日、ブローカーからの問い合わせで、「翻訳本出版の説明会」は実は、偽造株券販売のための説明の場だったと知ったという。同社幹部は「会議に出た『女性常務』も偽物。詐欺グループにまんまと利用された」と語っている。
また、説明会に出席したブローカーの1人は取材に対し、「喫茶店などではなく、実際のDHCの会議室で、実在の社員まで出てきた。これまでも数々の未公開株の取引にかかわってきたが、すっかりだまされた」と話した。
説明会で偽造株券をつかまされたブローカーらは、一般投資家にこの株券を販売。末端では1株100万円の値が付くこともあったといい、全国で50人以上が“2次被害”に遭ったとみられている。
DHCには今でも、偽造株券を購入した投資家から問い合わせの電話がかかってくることから、同社は、一般投資家に偽造株券を売りさばいているブローカーらを詐欺容疑などで警視庁に刑事告発するとともに、投資家に対し、「当社に上場の予定はない」と注意を呼びかけている。
◆DHC=吉田嘉明社長が1972年に創業し、委託翻訳業務を開始。3年後、株式会社に改組した。83年、化粧品事業部設立と同時に発売した「DHCオリーブバージンオイル」がロングセラーに。その後、出版事業部、教育事業部を設立し業務を拡大。97年、化粧品の通信販売を始め、通信販売会員数は2002年に290万人を突破した。(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040424-00000206-yom-soci