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2004年04月23日(金) 07時34分

摂食障害の素人治療で3億円集める…すがる患者数百人読売新聞

 所得税法違反(脱税)で3月、東京地検に起訴された山形賢二被告(54)は、5年ほど前から摂食障害の女性のカウンセリングを行い、治療費の名目で、起訴対象となった2年間だけでも約3億円を集めた。1回8万円の“治療”を受けた人は数百人に上り、「いかがわしい行為をされた」と訴える女性もいる。治療法の確立していない病気に苦しむ大勢の患者が、素人療法にすがり、被害に遭っていた。(社会部 小林 篤子)

 山形被告主宰の「摂食障害回復支援会」は、東京・世田谷のマンションで看板もなく、ひっそりと営業されていた。

 「ここは“気”の空間。肌の露出が多い方が、気が入りやすい。脱ぐ許可をあげます」。昨年10月、都内の女性会社員(27)は、そう告げられた。他の患者は裸になっていた。「ここで見捨てられたら治らない」と、やむなく従った。結局、十数回通い、百数十万円を払った。

 女性は3年前から過食とおう吐を繰り返していた。誰にも相談できず、インターネットでやっと見つけたのがこの会だった。“治療”では、患者らが車座になって体験を語り合い、全裸の山形被告が抱きしめることもあった。

 山形被告は十数年前に会社を辞め、悩み事の相談に乗ったり、「ダイエット研究所」を主宰したりした後、摂食障害のカウンセリングを始めた。昨年末からは、宗教活動を装うことで課税を逃れようと「賢治安大菩薩」を名乗り、「お布施」の名目で金を集めていた。

 2月に結成された「被害者の会」には、既に問い合わせが200件以上寄せられている。相談を受ける紀藤正樹弁護士は、「『3か月以内に90%以上が大幅に回復する』などとだまし、金を巻き上げた悪質な詐欺だ」と憤慨する。

 だが、詐欺罪での立件は困難とみられている。中には、山形被告のおかげで良くなった、という患者もいるからだ。摂食障害の治療は飲み薬から精神療法まで多岐にわたり、標準的な方法が確立されていないため、「良くなった」という声を否定することも難しい。厚生労働省の研究班も昨年3月に初めて治療指針を出したばかりだ。

 国立精神・神経センター国府台病院の石川俊男心療内科部長は、「患者を裸にして抱きしめるなど言語道断だが、所々に本物らしい部分もある。治療法を必死に探し求める患者が、この会にすがってしまったのではないか」と話している。

 山形被告は供述で「最初は金もうけのつもりだった」としながらも、「自分なりに勉強し、病気を良くしてあげようと一生懸命やった」と主張しているという。

 ◆摂食障害=拒食や過食、過食おう吐を繰り返すなど、正常な食生活を送ることが出来ない病気。思春期のダイエットなどがきっかけで、10—20代の女性に発症することが多い。厚生省(現厚生労働省)研究班の調査では、入通院する推計患者数は10万人あたり18・5人(98年)で、80年に比べて約10倍に増えている。(読売新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040423-00000501-yom-soci