2004年04月21日(水) 00時00分
管理 明文化3院だけ 診療記録流出問題(朝日新聞・)
重大な個人情報が集まる病院で、情報管理の意識は全職員に広がるのか。県済生会宇都宮病院(宇都宮市)で診療報酬明細書の下書き(中間レセプト)が流出した問題を受け、朝日新聞社は県内の主要な11病院にアンケートを行った。中間レセプトの院外への持ち出しの禁止を明文化しているのは3病院で、多くは「現場での意識の徹底」に頼っている。一方で「マニュアル化だけでは解決しない」との声もある。
アンケートは20〜21日に電話で行い、事務を担当する管理職らが回答した。
中間レセプトの持ち出しの禁止については、大田原赤十字病院(大田原市)と芳賀赤十字病院(真岡市)が「日本赤十字社の文書取扱規程に明文化している」と回答。下都賀総合病院(栃木市)を含め3病院が文書で規定していた。佐野厚生総合病院(佐野市)が「現在、診療情報管理規程を作っている」としているが、他の病院は「口頭で指導している」「守秘義務は当然のことで、流出は考えられない」などと答えた。
●職員の自覚頼み
済生会宇都宮病院は昨年6月に内部規定を作り、個人情報を含む文書の院外持ち出しを禁止していた。管理者側は、中間レセプトもここに含まれると考えていたが、職員側の受け止めは必ずしも一致していなかった。月に数万枚ものレセプトの確認に追われる「現場」との意思疎通の不十分さをあらわにした。
「文書をいくら作っても、職員が自覚を持つよう、繰り返し指導するしかない」。担当者がそう指摘する西方病院(西方町)では、「だぶったり混在したりして、間違いの元だ」として中間レセプト自体を作っていない。大規模な病院ほど処理量が多く、中間レセプトでの確認が必要にならざるを得ないが、ある病院の事務部長は「中間レセプトは、カルテなどに比べ、管理の度合いが低いという現実があるかもしれない」と話した。
●院内からは想定外
流出を受け、芳賀赤十字病院では20日に医事課の全職員が集まり、個人情報の保護管理について確認した。
多くの病院では、患者らにカルテやレセプトを開示する取り組みを進める中で、院内に情報管理についての委員会などを設けている。だが、院内からの流出よりは、ネット化によるシステム上の漏洩(ろうえい)を防ぐことが中心だ。
文書の廃棄処分方法も様々だ。下都賀総合病院や大田原赤十字病院などでは、職員が文書を処理施設に運んでいるが、外部の業者に委託している病院もある。
業者とは契約時に「機密保持について契約書に明記している」(芳賀赤十字病院)というが、今回の問題が出たことで、「何らかの規定が必要ではないか」とする声も出てきそうだ。
●難しい職員の判断
済生会宇都宮病院は今回の問題を受け、個人情報を含むあらゆる文書について、それぞれの具体的な取り扱い方法を挙げた内部規定の作成に乗り出す。ある病院の担当者は「理想的な取り組みだが、膨大な時間がかかるので、うちの病院では現実的ではない」と漏らす。
どこまでが個人情報を含むものか、判断することも難しい。西方病院の担当者は「職員が近所の患者から自分の診断について聞かれることもある。あらゆるケースについて、入社時から徹底することが大切だ」と話す。
済生会宇都宮病院の取り組みが意識改革の先駆けとなるのか。病院関係者だけでなく、医療をゆだねる患者からも注目される。
開原成允(しげこと)国際医療福祉大教授(医療情報学)の話
済生会宇都宮病院の情報流出などをみると、医療界では個人情報保護の教育が徹底していないと認めざるを得ない。個人情報保護法が来年4月に全面施行されれば、漏洩(ろうえい)は即座に「違法行為」となる。各病院は情報保護の「憲法」の策定を急ぐべきだ。規模や立地環境などで病院ごとに憲法は異なるだろうが、自分たちで作れば、情報管理に対する医師、職員の意識は高まる。さらに、それを第三者機関に認めてもらったり、個人情報に関する専門職員を置いたりすれば理想的だ。
(4/21)
http://mytown.asahi.com/tochigi/news02.asp?kiji=4064
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