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2004年04月21日(水) 00時00分

「自己責任論」席巻に危ぐの声広がる メール署名も信濃毎日新聞

 イラクで拘束されたNGOのメンバーやフリージャーナリストに政府関係者が「自己責任」を強調したり、インターネットの掲示板にも中傷する書き込みが増えている。これに対し、異議を唱える「共同声明」を電子メールで転送したり、シンポジウムを開くなどの動きが県内で出ている。

 〇二年に独立した東ティモールの支援活動をしている「東ティモール支援・信州」事務局の及川稜乙さん(58)=大町市=は十九日、「『自己責任』を批判する緊急共同声明」に電子メールで署名した。「『自己責任』論は、紛争地域でのNGOやジャーナリストの活動を委縮させて締め出し、その独立性を失わせる」との内容だ。

 声明は、反グローバリズムの「世界社会フォーラム」の連絡会事務局を務める小倉利丸・富山大教授(経済学)が原案を作成、連絡会に加わる団体・個人にメールで送った。騒乱時にも東ティモールに渡航した及川さんは「危険地域で活動する身として他人事ではない」と思い、署名。知人にも転送した。小倉教授によると、二十日朝までに千四百人の署名が集まっており、二十一日に締め切り、外務省などに提出するという。

 南佐久郡南相木村の診療所医師、色平哲郎さん(44)は十七日、海外メディアの見方を紹介する意味で、人質になった三人の行動を擁護する仏紙「ルモンド」や、自己責任論で委縮する家族の姿を報道した「南ドイツ新聞」を、医療系学生らが登録する複数のメーリングリストなどに発信した。

 「緊急時に国は国民を保護しなければならない」「今のイラクで効果的な活動をするためには、百戦錬磨の経験が必要」などの返信が届いているという。

 長野市の「ひとミュージアム上野誠版画館」は二十五日に開く「自衛隊のイラク派遣と人質問題を考えるシンポジウム」では自己責任論を討議する。コーディネーターを務める長野大学非常勤講師の野口清人さん(68)は「自己責任と短絡化しないで、多くの人の意見を基に自分自身の問題としてとらえる機会にしたい」と話している。

http://www.shinmai.co.jp/news/2004/04/21/010.htm