2004年04月20日(火) 07時09分
ボーダフォンの料金戦略迷走、実質値上げで建て直しの見方(ロイター)
志田 義寧記者
[東京 19日 ロイター] ボーダフォン(東京都港区)の料金戦略が迷走している。昨年10月に導入した土・日曜と祝日のボーダフォン同士の通話料が全国一律1分5円(税込5.25円)となる割引サービス「ハッピータイム」を6月末で終了するほか、同時に値下げした第三世代携帯電話サービス(3G)のテレビ(TV)コールの通話料も元の水準に戻すことを決めた。今回の料金改定について、業界では赤字を減らすために、総額では値上げを意図したものとの指摘が出ているが、度重なるユーザー不在の料金・制度変更に、ボーダフォン離れを危惧する声も聞こえてくる。
<実質値上げとの見方>
7月からは、土・日曜と祝日のボーダフォン同士の通話が、5分を超過すると、その後の30分間の通話料が無料となる新割引サービス「ハッピータイム2」を開始する。通話開始から5分間と35分以降は、契約している料金プランの通話料を適用。またハッピータイムで対象だったプリペイドサービスの通話とTVコールの通話は、対象から除外した。
同時に、プリペイドサービスの通話料も現行の全国一律20秒20円(税込)から、同1分60円(同)に改定するほか、昨年10月に値下げしたTVコールの通話料も元の水準に戻す。具体的には、「音声通話と同額」だった通話料を、元の「音声通話の1.8倍」に引き上げる。ある販売代理店は、TVコール通話料の値上げに対して、「ボーダフォンは昨年、10の約束を公表しており、その中でTVコールサービスが一般通話と同じ料金で利用できるとうたっている。これとの整合性をどうするのか」と疑問を投げかける。
一連の改定について、ボーダフォンは、「顧客への利便性を含め総合的なサービスの向上を検討した結果、今回の施策を決定した」(広報部)と説明するが、継続性が重視される通信業界で、朝令暮改の料金改定に首をひねる業界関係者は多い。ある関係者は、「今回の料金改定は明らかに総額で値上げを意図したものだ。プリペイドサービスの課金も20秒でも1分でも同じ60円となってしまい、ユーザーにとっては実質値上げとなる」と指摘。また、別の関係者も、「通常の通話は5分以内に終わることが多いため、ハッピータイム2も大部分のユーザーにとっては事実上の値上げとなる」との見方を示す。
前出の販売代理店では、ハッピータイムを利用するために、2年単位での契約が必要な割引サービス「ハッピーボーナス」に加入したユーザーも多数おり、「わずか9カ月でのサービス終了は、顧客に説明がつかない」と訴える。
同社は過去にも、Eメールアドレスの変更で、混乱したことがあった。J─フォンからボーダフォンへの社名変更に合わせ、昨年7月に、ドメイン名の変更を表明したが、一方的な変更に対して、ユーザーが反発。翌8月には事実上撤回に追い込まれた経緯がある。
料金改定は、プリペイドサービスの契約者数にも影響を及ぼしそうだ。同ユーザーの中には、ハッピータイムが適用される週末のみの利用者も相当数いるとみられており、ハッピータイム2でプリペイドサービスが適用除外となったことは、今後の契約数に大きな影を落としかねない。
<ライバルに後塵>
2003年度の契約者純増数は、KDDI<9433l.T>のauの290万9700件、NTTドコモ<9437.T>の206万5700件に対し、ボーダフォンは103万9100件と大きく差をつけられた。とくに昨年7月からは、2000年11月に地域会社を1社に統合して以来、3カ月連続で最低を記録するなど、ユーザー離れも深刻だ。3Gサービス「CDMA2000 1x」で首位を独走するau、FOMAの新シリーズ「900i」で巻き返しを図るドコモとは対照的に、端末、サービスの両面で新機軸を打ち出せずにいるためだ。Auに続き、NTTドコモもパケット通信定額制の導入を表明する中で、ボーダフォンはこれにも追随できずにいる。
ダリル・グリーン社長は昨年11月、ロイター通信とのインタビューで、英ボーダフォン<VOD.L>傘下に入った効果や、各種割引サービスの導入の影響について、「1年後に結果が出る」とし、事業の先行きに自信を示した。しかし、すでに半年が過ぎようとしているが、一向に改善の兆しは出ていない。業界で初めてTVチューナー付き携帯電話を投入するなど、一部に攻めの姿勢もみられるが、ユーザー本位のサービス・料金体系を打ち出すことができなければ、今後も復活は期待できないとみられている。(ロイター)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040419-00000962-reu-bus_all