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京都の丹後地方でつくられる「まつぶたずし」も早ずしで、ハレの日につくられる。「まつぶた」とは浅い木箱のことで、そこにすし飯を薄く敷き、上に甘く煮付けた具を散らす。そこにまたすし飯をのせ、具を散らし、最上部には甘煮したニンジン、シイタケ、カマボコ、焼きサバのオボロ(または紅色に染めたタイのオボロ)、錦糸卵、グリンピース(キヌサヤ)、カンピョウ、紅ショウガなどを彩りよく散らし、上から手で軽く押して出来上がり。それを篦で切り出し適宜に小分けして食べる。
このまつぶたすしの特徴は、とても色彩が美しくて華やかなことで、まるで春のお花畑のようなので、私はこの類のすしには「観賞ずし」とも名付けている。また、食べ方にも大きな特徴があり、篦で切り出しながら箱からすくい出す方法は、お好み焼きやピザパイに似ていて、全国のばらずしの食法の中では稀なことである。誠にもって遊戯的でもあり、食べる人たちがひとつになれて楽しい。
江戸時代の料理本『名飯部類』(享保2年)には、まつぶたずしの食べ方は駿河国の「切り出しずし」や「すくいずし」に似ている、などということが書いてある。この記述からみると、まつぶたずしはきっと、箱ずしから混ぜずし(大きな平鉢などでつくる手こねのばらずし)への移行期の形態を残して、今に伝わっているのだろう。ハレの日である春祭りや田植え、子供たちの誕生日、婚礼祝宴などによくつくられたのは、その彩りの華やかさからである。