2004年04月15日(木) 16時02分
蘇生40分、外傷性心停止から生還 滋賀医大 後遺症なく退院(京都新聞)
多臓器不全で心停止後、40分間の心肺蘇生術と新しい外傷救命法で一命をとりとめ、退院した横山和之さん(中央)=滋賀医科大病院
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交通事故による心停止後、滋賀医科大病院で40分間の心肺蘇生術と集中治療を受けた結果、奇跡的に生還した大学生が今月初め、神経系の後遺症もなく退院した。昨年、国際標準の外傷救命法を導入した同病院救急集中治療部は「院外の救急隊、院内の救急医療チーム一体となって取り組んだ新外傷救命法の成果。新救命法の普及をさらに図りたい」という。
心停止から奇跡的に生還したのは、大津市大萱3丁目、関西大3年の横山和之さん(20)。昨年11月4日、オートバイに乗っていた横山さんは大津市内でトラックと衝突、同救急集中治療部に運ばれたが、右肺挫傷、骨盤骨折、膀胱(ぼうこう)破裂で心停止となった。40分間、心肺蘇生(そせい)術を施した結果、心拍が再開したため、胸部外科チームによる肺挫傷に対する修復術を受け、集中治療室に移って肺挫傷、敗血症、腸管不全、黄疸(おうだん)、腎不全等の治療を続け、今月1日退院した。
心筋梗塞(こうそく)など内科的な心停止に比べ、外傷性心停止は、出血による低酸素状態などを伴うため蘇生が難しく、蘇生しても中枢神経系に後遺症を残す場合が多いが、横山さんは後遺症も見られず、退院後は自宅から同病院へ通ってリハビリテーションを続けている。
欧米ではBTLS(初期外傷救命法)、ATLS(2次外傷救命法)など標準化された外傷救命法が普及しているが、日本では昨年から、救急隊員に対するJPTEC(日本救急医学会)、救急医らを対象にJATEC(日本救急医学会、日本外傷学会)などを中心に講習を始めたばかり。
外傷治療は、適切な処置法を訓練されていないために生じる\\”防ぎうる死\\”も多く、救命できても心停止後、脳にダメージを受けるため後遺症があるケースが多い。40分間も心肺蘇生術の後、中枢神経系を無傷でリカバリーした例は極めてまれ、という。
JPTEC、JATECのインストラクターでもある同大学救急集中治療医学講座の長谷貴將助教授は「ATLSと消防を含めた各科連携プレーの成果。来日中だった世界集中治療医学会のバックマン会長の助言を得たことも幸運だった。今後は、NBC(核、生物、化学)の事件、事故への対応も視野に入れながら標準化された外傷救命法の普及を図り、\\”防ぎうる死\\”を減らす努力をしたい」という。 (京都新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040415-00000035-kyt-l25