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原子力発電所や再処理工場など原子力施設は、多数の機器からなる高度な工学的システムである。従来の安全確保は不具合を見越して機器を二重、三重にし、異常発生や、その拡大防止など個別の安全設計に力を入れてきた。
だが、事故は多くの場合、システムの最も弱い部分で起きる。これまでの方法ではシステム全体のリスクを評価するのに不十分だった。
ことしの原子力安全白書が「リスク情報を活用した原子力安全規制への取り組み」をテーマに掲げたのはこうした問題意識からだろう。
原子力施設は、事故を起こせば取り返しがつかない被害を周辺に及ぼす。従来の安全規制に加えて新しい方法も取り入れ、安全性を高めるのは国民の要請でもあるといえよう。
具体的には、個々の機器や設備で起きる不具合の種類やその頻度、作業員のミスの発生確率などをあらかじめ計算し、安全規制に役立てようというのが、リスク情報を活用した安全規制の考え方である。
これによって、システムの脆弱(ぜいじゃく)な部分に人、物、資金を集中的に投入できるが、国内の原子力施設ではまだ十分に活用されていない。
というのは、個々の不具合記録を蓄積したデータベースが構築されていないからだ。国内のデータだけでは足らず、海外のデータも借用しているのが現状である。国がリスク情報の本格的活用を目指すならば、原発など原子力施設から正直に情報が届くように、早急に体制を整備する必要がある。そうでないと「絵に描いた餅(もち)」に終わってしまう。
旧来の安全規制に限らずリスク情報の活用も、原子力施設の現場で作業員が決められた運転規則などを順守しているという前提に立っている。一九九九年九月に茨城県東海村で起きた臨界事故のように、現場の作業手順違反が原因の事故は、想定されていない。
言い換えれば、リスク情報の活用でこれまでより安全性が高まるとしても、絶対ではないということだ。
この点を忘れてはならない。
リスク情報の活用は近年、食品分野でも行われているが、それに比べて白書は具体例に乏しく難解である。これまで分かりやすい白書を刊行してきただけに、今回は出来の悪さが目立つ。安全委が合言葉にしてきた「社会の理解」にこたえるためにも、今後記述に工夫を求めたい。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040413/col_____sha_____003.shtml