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[日本医師会]「“圧力団体”から脱皮する時だ」
十六万人の医師を会員に擁する日本医師会は、しばしば“最強の圧力団体”と称される。
そのトップに、小泉政権の医療制度改革を批判してきた前大阪府医師会長の植松治雄氏が圧倒的な票差で選ばれた。診療報酬の引き下げなどに対する医師の不満が、それだけ大きいことを示している。
専門職能集団として、医療制度改革に注文を付けるのは当然のことだ。とはいえ、医師の既得権擁護が目立ち過ぎるようでは、国民の理解は得られない。日医も、「医師の賃上げ交渉団体」とみられるのは不本意だろう。
医療の安全対策や質の向上など、緊急に取り組むべき課題が山積している。日医の責任は極めて重い。国民から信頼される専門職能集団を目指し、抜本的な体質改善を図ってほしい。
日医の力の源泉は、豊かな資金力と集票能力にある。「カネ」と「票」を武器に、医療政策に多大な影響力を行使し、医療機関の収入を左右する診療報酬などで日医の主張を通してきた。
だが、若手の医師会離れなどで日医の力にも陰りが見える。かつては「医者の往診カバンには二百票は入っている」と言われた。それが二〇〇一年の参院選では、日医が推す自民党の武見敬三参院議員の得票は約二十三万票にとどまった。会員一人あたり一・四票に過ぎない。
小泉内閣ではトップダウンによる政策決定が増え、厚生族議員を通じて圧力をかける手法も通じにくくなった。
二〇〇二年度には診療報酬本体が初めて引き下げられた。サラリーマンの自己負担三割への引き上げは、患者の減少をもたらした。二〇〇四年度の診療報酬改定でも、アップを求めた日医の主張は通らなかった。構造改革特区での株式会社の病院経営参入も一部認められた。
「財政至上主義」や「競争原理主義」に反対する日医にとっては逆風の時代といえよう。それが医療制度改革に柔軟な対応をとる執行部への批判となり、今回の選挙結果となった。
不満も分かるが、「カネ」と「票」で医療政策を牛耳る時代ではない。政党を味方につけるより、国民を味方につけることを考えるべきではないか。
そのためには、組織の透明性を高め、医療の安全や質の向上に貢献する取り組みを積み重ねていくことだ。
日医でも、問題のある医師を排除する制度や、すべての医師に生涯教育を義務づける制度などを検討している。早く実現してほしい。一度取得すれば一生有効である医師免許の更新制についても、積極的に議論すべき時期にきている。