2004年04月02日(金) 03時39分
<回転ドア事故>国交省が危険性を認識 具体策を講じず(毎日新聞)
東京都港区の六本木ヒルズ森タワーでの男児死亡事故に発展した自動回転ドアをめぐり、国土交通省が昨年2月、「回転ドアは危険で設けないことが望ましい」とする文書をまとめていたことが分かった。ビルなどの建築・設計のガイドラインとして有識者らを交えて作成していた。国交省は危険性を認識しながら、その後も安全基準作りなど具体策を講じておらず、「行政の不作為」ともいえる姿勢が問われそうだ。
文書は「高齢者・身体障害者等の利用を配慮した建築設計標準」。不特定多数の人が利用する施設で高齢者や障害者らに配慮した設計を促す「ハートビル法」の改正法施行(昨年4月)されるのを前に、国交省が01年9月、建築関係の専門家、国交省や厚生労働省の担当官、障害者団体の代表ら24人による委員会を設置した。委員会は「すべての人に使いやすい建築物整備を目標」に検討し、まとめた。
ハートビル法の改正についての説明とガイドラインの2部構成で、ドアは「建築物の出入り口」の設計についての項目に記載された。この中で、回転ドアについて「設けないことが望ましく、もし設ける場合は(一般の自動ドアである)引き戸、開き戸を併設することが望ましい」「高齢者・障害者等には使いにくく危険」などと記していた。
文書は、国交省の外郭団体「建築技術教育普及センター」が建築士を対象にした講習会などでテキストとして使われている。委員会の長を務めた高橋儀平・東洋大教授(建築計画学)は「回転ドアに視覚障害者のつえが挟まったり、高齢者の歩くスピードに合わないのは常識的に明らか。だから、ガイドラインでは『危険』と書いた。国交省がこれまで油断していた面は否めない」と話している。
森タワーの事故を受けて国交省は、経済産業省と合同で安全基準を作成することを明らかにしている。国交省建築指導課は「回転ドアそのものが危険だと言っているのではなく、ハンディキャップのある人にとって、使いづらいという意味で『危険』という表現を使った。当時は重大な事故は把握されておらず、安全基準を作ろうという話は出なかった」と説明している。【青島顕】
視覚障害者の生活を支援する東京都内のボランティア団体「福祉ウオッチングの会」副代表の前島賢三さん(62)の話
行政が危険性を分かっていながら、病院や子供の行く場所に次々と回転ドアが作られ続けたのは許せない。行政が監督責任を放置していたと言われても仕方がない。(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040402-00000156-mai-soci