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【ヤフー、あゆも入居】
六本木ヒルズは昨年4月25日にオープン。54階、高さ238メートルのオフィス棟・森タワーを核に、ホテル、マンション、レストランが並び、東京の新名所である。
だが、開業1周年を前に経営の屋台骨が揺らぐのは必至だ。今回の事故で、森ビルは30日、業務上過失致死容疑で警視庁の強制捜査を受けたほか、子ども連れの買い物客が敬遠するようになれば、年間400億円超を見込む商業店舗の売り上げが激減する。
オフィス棟には、ITベンチャーのヤフー、楽天が本社を構え、超高級賃貸マンションには「ワイドショーで“ミスター六本木ヒルズ”と呼ばれ、最上階の2部屋を借りている関口房朗ベンチャーセーフネット会長やソニーの出井伸之会長、歌手の浜崎あゆみが住んでいる」(入居者)。
もっとも、当初はテナントを募集するのに苦労し、「フリーレント(一定期間の家賃を無料にする)で集めた」(関係者)。「事故は本当に痛ましい。あそこを通る度に思い出され、つらくなる」(入居者)との声もあり、イメージ悪化が続けば、別のビルに移るテナントも出かねない。
【小説家志望の2代目】
森ビルは稔社長の父、泰吉郎氏が昭和34年に創業。泰吉郎氏は横浜市立大商学部長も務めた学者肌の人だったが、「ここぞというときは借金して積極的に事業展開する」(知人)という大胆さも持ち合わせ、“ビル王”とも呼ばれた。
この父のアクティブさを受け継いだと評されるのが稔氏だ。
昭和9年、京都生まれ。学生時代は小説家を志す文学青年だったが、34年に東大教育学部を卒業後、森ビル設立と同時に取締役になり、平成5年から社長に就任した。
バブル期に地上げに走った他のデベロッパーとは一線を画し、「都市再生のプロデューサー」を標榜し、「ラフォーレ原宿」「アークヒルズ」などの大型再開発事業を手がけた。同社は昨年4月現在で120棟以上の賃貸ビルを保有する。
【兄弟の確執】
その集大成が構想から実現まで17年、総工費2700億円を投じた六本木ヒルズだった。グランドオープンには小泉首相が挨拶に駆けつけている。小泉政権の掲げる“都市再生”のシンボルでもあったのだ。
だが、積極経営のツケも回ってきている。同社の連結有利子負債は売上高の約5倍の7800億円(2003年3月期末)に及ぶ。
2歳年下の実弟、章氏(森トラスト社長)は安田信託銀行(現みずほアセット信託銀行)出身の「堅実派」。かつては兄のブレーキ役だったが、父の死後(平成5年1月)、たもとを分かつ。
事業の継承をめぐって兄弟喧嘩が続き、「結果、兄の稔氏がアークヒルズ、六本木ヒルズなど中長期的な事業部分、弟の章氏は御殿山ヒルズ、城山ヒルズなどの中期的事業部分に分け、数あるナンバービルも2人で分け合った」(知人)。
【世界一の夢…】 ブレーキ役のいなくなった稔氏は、六本木ヒルズのあと、中国・上海で世界一の高層ビル建設(101階)の夢に突き進んでいく。
稔氏と親交のある月刊BOSS』主幹の針木康雄氏は「マレーシアや台湾で高さ世界一のビルが出現すると、『1メートルでも高くしろ!』とゲキを飛ばしていた。上海のビル構想は一時、延期になっていたが、最近また本気で取りかかっていた。今度の事故は、彼にはいい反省材料、頭を冷やす機会だろう。イケイケドンドンで、ひとりバブルのようにも見えていたから」と話す。
だが、頭を冷やすだけで信頼回復ができるのか。進退問題も取りざたされる。
「(顧客情報漏れの)ジャパネットたかたの自粛は見事な対応だった。(次期社長とされる)森ビルの森浩生専務は娘婿で、まだそこまでの器ではないが、社長の進退も視野に入れ、世間に反省の色をどう示せるかが問われる」(針木氏)
稔氏の座右の銘は「竜になれ、雲自ずから集まる」(中国の故事で、何事も理念やビジョンが大事。信念や熱意が革新の雲を呼ぶとの意)だが、今や「画竜点睛(てんせい)」の意味をかみしめているのではないか。
ZAKZAK 2004/03/31