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[回転ドア事故]「最新設備の安全策への警鐘だ」
重大事故が起きるまでは、十分な安全策が顧みられない。今回も、その典型である。
昨年四月にオープンしたばかりの、東京の新名所と言われる六本木ヒルズで、小学校への入学を前にした六歳の男児が、入り口の自動回転ドアに頭を挟まれて死亡した。単身赴任中の父親を訪ねて母親と大阪から上京、母子で見学に訪れていた。
最新式の高層ビルの、しかも大勢の観光客が利用するドアに、このような危険が潜んでいたとは、両親には予想もできなかっただろう。男児は閉まりかけようとするドアに向かって一人で走り出したというが、喜び勇んだ子供には、決して特異な行動ではない。
本来、そうした場合も想定して安全対策を施すべきである。だが、事故防止用の赤外線センサーは、身長が低い子供の場合、感知できない範囲があった。事故の際も機能しなかった疑いが濃厚だ。人が挟まれた時にドアが逆方向に動く、衝撃緩和装置も付いていなかった。
安全確保のシステムが、こんなにお粗末では、事故を防げるわけがない。
六本木ヒルズでは、回転ドアに絡む事故が、わずか一年で三十二件も起きていたという。今回と同様、自動回転ドアに挟まれた事故も七件あり、被害者はすべて二歳から八歳の子供だった。このうち三人は救急車で病院に運ばれた。
軽微な被害を教訓とし、重大事故を未然に防ぐのが、危険防止の基本だ。ビル管理会社の森ビルと、回転ドアの製造と販売の親会社である三和シヤッター工業は、もっと早い段階から事態を深刻に受け止め、対策を講じるべきだった。
事故の続発を受けて、回転ドアのわきに駆け込み防止用のポールを置いたり、警告シールを張ったりはしていたという。しかし、ポールが置かれた理由を察知したり、わざわざ警告シールを見て出入りする人などいるだろうか。
今回の事故は、安易な対策で済ませた結果だ。安全軽視の、起こるべくして起きた人災である。
警視庁も業務上過失致死の疑いで捜査を始めている。両社は、互いに責任のなすり合いなどせず、事故原因を徹底検証し、問題点を明らかにすべきだ。
都市社会では、先端技術や最新の設備が次々と導入されている。自動回転ドアも、建物内の気圧や温度を一定に保つことができるため、オフィスビルや商業施設で急速に普及している。
関係業界は、子供のような弱者を含めた利用者の視点から、常に、必要な安全対策を迅速に講じるべきだ。それが万全であってこそ、便利さを享受できる。