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2004年03月30日(火) 01時03分

事故の回転ドア、メーカー側がセンサー感知範囲狭める朝日新聞

 東京都港区の大型複合施設「六本木ヒルズ」内の森タワーで、大阪府吹田市の溝川涼君(6)が自動回転ドアに挟まれて死亡した事故で、回転ドアを製造販売した業者の担当者が、回転ドアに挟まれるのを防ぐセンサーの誤作動を防ぐため、感知範囲を当初の基準より狭めていたことが分かった。地上80センチから天井までだった基準を、120センチから天井までと設定変更していた。身長117センチの涼君を感知できなかったことがほぼ確実となった。

 警視庁も同様の証言を得ており、感知範囲の設定変更が事故を招く要因の一つになった可能性があるとみて、関係者から事情を聴いている。

 ドアを製造した「田島順三製作所」の親会社「三和シヤッター工業」が29日、記者会見で明らかにした。

 「挟まれ防止センサー」は、天井部のものに加え、地上15センチの柱の下部にも設置されている。ドアが柱から70センチに迫った段階でセンサーが稼働状態になる。障害物を感知するとドアの回転に急制動がかかる。

 涼君は下部のセンサーでも感知されなかったとみられる。母親の手を離し、前傾姿勢で回転ドアに入ろうとしていたため、足元がセンサーに触れなかったとみられる。

 三和側の説明によると、昨年12月3日に行った定期点検では、天井部のセンサーの感度は正常で、地上80センチから上の範囲を感知していた。しかし、昨年12月7日、ヒルズ内にある別の自動回転ドアで、女児(6)がドアに体を挟まれる事故が起きた。

 これを受けて、ヒルズを管理する森ビル側が、緊急の安全対策としてドアの入り口に、駆け込み防止用の安全柵(さく)を設置した。柵は高さ約85センチのポール2本に幅約60センチで赤いベルトを渡したものだった。ところが、この安全柵のベルトは風を受けて激しく揺れ、センサーの誤作動が相次いだという。

 12月下旬、森ビル側のビル管理会社から三和側に「最近ドアが停止することが多い。何とかならないか」と相談があり、三和側の担当者がセンサーを操作して基準の80センチから120センチに範囲を狭めたという。この担当者は設定変更を上司にも報告した。

 センサーの性能などについて公的な安全基準はない。設定を変更したことについて、三和側は「客からの要望があり、それに根拠があれば変更することは実際にある」としている。設定変更が安全性に与える影響については、「(森ビル側が)安全柵を設けたことで、安全性が保たれていると判断した。変更は管理会社の了承のもとに行った」としている。

 一方、森ビル側は朝日新聞社の取材に「ベルトが風を受けたことで、センサーが誤作動したとは認識していない。変更を了承したことはない」としている。

 また、事故直後に捜査1課が調べたところ、このセンサーは地上から135センチ付近まで反応がなく、140センチ近くでも反応したり、しなかったりだったという。専門家によると、感知範囲はセンサーの汚れや、空気中のほこりなどの影響を受けやすいという。捜査1課は29日夜、事故が起きた回転ドア付近で現場検証を実施した。(03/30 01:03)

http://www.asahi.com/national/update/0330/001.html