2004年03月25日(木) 00時00分
埼玉医大医療過誤訴訟「積極的隠蔽」認めず(朝日新聞・)
◆医療過誤地裁判決 投薬ミスに限定 川越市の埼玉医大総合医療センターで00年、鴻巣市の女子高生古館友理さん(当時16)が抗がん剤の過剰投与で死亡した医療過誤を巡る損害賠償訴訟で、24日言い渡されたさいたま地裁判決は、遺族が強く訴えていた病院ぐるみの死因の「隠蔽(いんぺい)」を「不法行為とは言えない」として、医師らや病院の責任を問わなかった。投薬ミス自体は認めて大学と当時の主治医らに約7600万円の支払いを命じたものの、遺族は「娘に報告できない」と肩を落とした。
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遺族側は二つの点で医師らと大学に賠償を求め、提訴した。過剰投与の医療過誤自体と、友理さんの死亡後に医師らが死因を隠したために受けた精神的苦痛の賠償だ。
元主治医(34)らの刑事裁判でも業務上過失致死罪にあたると認定された過剰投与については、大学側も事実経過を大筋で認めており、遺族側は死因隠蔽の認定のほうを注目していた。死亡診断書に病死と記載したことや、死亡前後に元主治医や元教授らが過剰投与のことを説明しなかったことなどから、元主治医や治療チームを組んでいた上司の元教授(68)、同センターの所長や院長らが、組織的に死因の隠蔽を図った、と主張してきた。
しかし判決は医療過誤だけを認め、隠蔽に対する責任は問わなかった。診断書を虚偽と認め、元教授が「事故の大きさを恐れて決心がつかなかった」ため、死因を遺族に説明できなかったなどと隠蔽につながる行為も認めながらも、「隠蔽を図る積極的な意図をもっていたとは認められない」として請求を退けた。
◆両親、「娘に報告できぬ」 友理さんの両親らは判決後、会見を開き「医師をかばう判決だ」と不満をあらわにした。
父文章さん(50)は「こちらが期待していた部分を、まったく理解してもらえなかった」と顔を紅潮させた。
提訴の2カ月後に職を辞し、裁判と、医療過誤防止を訴える活動に専念する毎日。「あれから時間が止まり、すべてが変わった」。この日も「過剰投与の説明は簡単なのに、それをしないというのは、誰が見ても隠蔽だ」と強い口調で訴えた。友理さんにどう報告するか問われると「家に帰りづらい」と声を落とした。
友理さんが弁当箱を包むのに使っていたチェックの布袋に、友理さんの写真を包んで持ってきた母の恵美子さん(48)は判決の瞬間、顔をこわばらせた。会見でも「がっかりして言葉も出ない」と最後まで目を伏せたままだった。
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埼玉医大総合医療センターは「今後ともこのような重大な医療事故を起こさないよう再発防止策を徹底し、安全な医療の実現に全力を尽くしてまいります」とするコメントを発表した。
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http://mytown.asahi.com/saitama/news02.asp?kiji=5162
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