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「契約から1年以内に自殺した場合は生命保険金を支払わない」とする免責特約がある場合、1年以上前に契約した生命保険が支払われるべきかどうかが争われた訴訟で、最高裁第一小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は25日、「たとえ自殺の目的が保険金取得にある場合でも、免責期間を過ぎた契約分は保険金を支払う義務がある」とする初判断を示した。そのうえで、保険金請求を棄却した二審の遺族側逆転敗訴判決を破棄し、保険金額を確定するため審理を東京高裁に差し戻した。
商法は自殺の場合は「保険金支払いは免責される」としているが、期間については明示していない。このため、当事者間で結ぶ免責特約期間後の支払い義務についての解釈をめぐり、下級審の判断や学説が分かれていた。年間の自殺者が5年連続で3万人を超える中、生保が「保険金目的だ」として支払いを拒み訴訟になるケースが多くなっており、最高裁の判断が注目されていた。
同小法廷は、特約について「当事者の合意により、免責の対象範囲を一定期間の自殺に限定するもので、自殺の場合は保険金支払いが免責されるとした商法の規定にかかわらず有効だ」と述べた。
また、特約の意味については「一定期間を超えて自殺の動機を持続するのは困難なうえ、真の動機や原因の解明も難しいことから、目的によらず一律に支払わないことで生命保険の不当な利用を防止する目的がある」と指摘。特約で定めた「契約から1年」の期間を経過した後の自殺の場合は、自殺に犯罪などが介在し、保険金の支払いを認めると公序良俗に反するなど「特段の事情」がない限り、保険金目的の自殺でも支払われるべきだとした。その上で、今回のケースにそうした特段の事情はうかがえないと結論づけた。
判決によると、東京都内の建設関連の会社会長(当時61)は自分や会社名義で94年6月〜95年7月、妻や会社を受取人として生保7社との間で計10件、総額約20億円の保険に加入。95年10月、工事現場から転落して死亡した。生保7社は保険金の支払いを拒み、妻らは「事故だ」と支払いを求め提訴。一、二審とも「保険金目的の自殺」と認定したが、一審は自殺免責特約の文言通りに1年以内の保険だけ免責されるとし、それ以前に契約した4社分について計6億円の支払いを命じた。しかし二審は、商法の規定を根拠に「生保側が保険金目的と立証した場合は契約から1年以上経た分も免責される」と述べ、一切支払わなくていいと判断した。
〈自殺免責特約〉 生命保険は通常、約款で「保険契約責任が開始される日から1年以内に被保険者が自殺した場合は死亡保険金を支払わない」などとする免責条項を定めている。最近は免責特約の期間を2、3年に延ばす傾向がある。
(03/25 12:23)