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2004年03月23日(火) 00時00分

入学金 なぜ返してくれないの? 東京新聞

 「入学を辞退したのに高額な入学金を返してもらえないのはどうして?」。私立大への前納金をめぐって、千葉県内に住む読者(49)から、こんな声が生活部に寄せられた。入学金や授業料などの前納金返還をめぐっては裁判も起こされており、二十二日には東京地裁で、入学金を除く授業料などのみ返還を命じる判決が出された。 (藤 英樹)

 会社員Aさん(49)は先月、一浪の息子が滑り止めに受験、合格した首都圏の私大二校へ、入学金相当額計五十一万円を支払った。息子はその後、希望の大学に合格、入学を辞退したが、すでに二校に支払ったお金は、そのまま没収された。

 「入学手続きの締め切り日が、受験生が併願しそうな学校の合格発表日前に設定され、支払わざるを得ないようになっている。一浪でもう後がなく、保険のつもりで払ったが、やっぱりこれって変じゃないでしょうか」とAさん。

 二校とも合格者への入学手続き期限を二回に分け、二月中に入学金相当額を、今月下旬までに授業料や施設設備費など残額を納めさせる。今月三十一日までに入学辞退すれば「入学金を除く残りの納付金は返還する」と要項にうたっている。

 Aさんが両大学に入学金相当額を返還できない理由をたずねたところ、「これは『入学申込金』であり、入学手続きに関する費用。入学しなくても返還はできない」との答え。だが、Aさんは「二万−三万円なら入学手続きの費用と言われて納得もするが、入学金は三十万円近い。高すぎる」と釈然としない様子だ。

 実は両大学の対応は、一九七五年に文部省(当時)が出した「入学金を除く授業料などの納付金は(期限内の辞退者に)返還するように」との通知に従っている。大手予備校・代々木ゼミナールの昨秋の調査では、返還制度のある私大は四百九十四校にのぼるが、入学金(相当分含む)まで返還しているのはわずか十四校。ほとんどの大学がこの通知に従っている。

 なぜ入学金は除くのか。文部科学省は「入学に要する費用であり、いわば手付金、予約金のようなものだから。高いか安いかは言う立場にない」(私学助成課)と説明する。

 日本私立大学連盟(加盟百二十三校)の山下隆一総務課長は「あくまで各大学が個別に判断していること」と前置きしてこう説明する。「大学側は合格者のうち入学金を支払った人数をもとに入学率を予測し、教室や教員を手当てする。返還したり金額を下げれば、辞退しやすくなり、定員割れの恐れも出てくる」

 しかし、これには大学側自身にも異論がある。入学金を返還している産業能率大(東京都)の林巧樹入試センター長は「導入当初こそ入学率が悪くなるのではと心配したが、結局変化はなかった。大学の規模を問わず、返還の有無は受験生の受験動向に影響しない」と語る。

 昨年から入学金を返している秀明大(千葉県)の川島幸希理事長も「定員割れのリスクがあるから入学金を返さないというのはへ理屈。補欠を出せば済む話だ。こんな不条理な対応がまかり通るのはおかしい」と話す。

 入学金や授業料などの前納金返還をめぐっては訴訟も相次いでいる。入学金・授業料問題東京弁護団によると現在、親や元受験生ら百十六人が五十五大学を相手に訴えており、返還請求総額は一億八千万円余にのぼる。

 二十二日に東京地裁で判決が出された裁判はこの一部で、元受験生ら十三人が東京医大など四大学を相手に前納金の返還を求めていた。判決は(1)入学金は入学する権利を確保するための権利金であるとともに、入学受け入れ準備の費用であり返還義務はない(2)授業料などは大学教育の提供に対する対価であり、教育が提供される前に契約が解除された場合は返還すべき、入学辞退で大学に損害は生じない−として、事業者は損害を超える違約金を請求できないとする消費者契約法を適用、入学金を除く授業料などについて返還を命じた。

 これに対し弁護団事務局長の塩谷崇之弁護士は「入学金などの納入金はすべて教育活動提供への対価であり、教育活動が開始される前に辞退すれば当然入学金も返還されるべきだ。損害が生じるというなら大学側は算定根拠を示すべきで、実際は多くの大学が定員を超過して入学させており損害は生じないはず」としている。

 同弁護団は今後、まだ判決が出ていない裁判で、入学金も含めて返還が認められる可能性もあり「入学辞退する場合は、今月三十一日までに、内容証明郵便などで、辞退と返還を求める旨を、大学に通知しておくのが得策」としている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040323/ftu_____kur_____000.shtml