2004年03月21日(日) 10時00分
流通の混乱 連載「何が起きた(4)」(京都新聞)
情報が混乱する中で、安全をアピールするスーパーの卵売り場(2月28日、京都市伏見区)
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京都市南区の鶏肉卸会社の社長は、電話の声から相手が慌てているように聞こえた。「アリノベから来た鶏の出荷を止めてほしい。こちらもすぐ行きます」。京都市南保健所の電話要請で、自宅にいた社長は車を走らせ、会社に急いだ。浅田農産船井農場で鳥インフルエンザ感染が確認された2月27日。夜の11時を過ぎていた。
▽勘違い続き情報交錯
26日夜に兵庫県八千代町の食肉処理場「アリノベ」から鶏100羽を納入していた。その鶏は船井農場から25日にアリノベに出荷されたもの、と南保健所が説明した。社長は「兵庫県産と思い込んでいた」。朝から船井農場のニュースを聞いてはいたが、「風評被害ばかりを心配していた」という。
「26日の商品は出てないか。全部止めてくれ」。会社に着いて指示すると、従業員は倉庫内の段ボール箱の山を指さした。「この出荷を止めれば大丈夫です」
翌朝。スーパーや百貨店への対応に追われた。そうした最中だった。問題の鶏が自分の会社から市内の問屋などに卸され、一部が消費者に販売されたことを知らされた。
「従業員の勘違いだった。従業員が止めたのは、肉を切り分けるなど加工した鶏だけ。加工しない鶏は、すでに出ていた」と社長は当時の混乱を振り返った。取引先に連絡すると、「客に全部出した」との返事。草津市内の卸業者は冷蔵庫に保管していたため、従業員を回収に向かわせた。
さらに勘違いは続いた。南保健所に出向いた同社幹部が、別産地の鶏まで船井農場の出荷分に加えてしまった。伝票の読み間違いだった。
すでに、同社から船井農場の鶏60羽が出回ったと報道されていた。京都市の発表に基づいていた。しかし市は、実際の出荷先での確認をせず、同社の伝票の読み間違いをチェックできなかった。3月2日、市は「大阪府などに出荷されたのは別産地の可能性が高い。実際は36羽」と修正した。市幹部は「情報が二転三転し、確認が不十分だった」と苦り切った表情で釈明した。
船井農場の卵も一部が市中に出回った。京都府が流通先や流通量を訂正発表するなど、情報は混乱した。(京都新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040321-00000018-kyt-l26