2004年03月20日(土) 11時30分
未明の発覚 連載「何が起きた(3)」(京都新聞)
鳥インフルエンザ感染が確認され、鶏舎への消毒作業が続いた(28日、京都府丹波町・浅田農産船井農場)
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2月27日午前1時すぎ。京都府南丹家畜保健衛生所(八木町)の獣医は、浅田農産船井農場の鶏舎に足を踏み入れて、不思議に感じた。「えらい、きれいな死に方やな」
鶏舎は薄暗かった。電球の明かりで見える範囲で、1−2割の鶏が死んでいた。立ち会いの従業員が声をかけてきた。「やけにたくさん死んどるんや。何なんやろ」
獣医は、その夜を思い出しながら話を続けた。鳥インフルエンザの特徴的症状とされる顔やとさかの腫れは、見られなかったという。「こんな時期だけに、まずインフルエンザだと考えた。しかし、言われている症状がなく、なんでやろう、という気持ちだった」。疑問を抱きつつ検査のため鶏を袋に入れ、持ち帰る作業を進めた。
▽匿名で「毎日死んでる」
その5時間前だった。勤める衛生所に1本の匿名電話があった。「丹波町の養鶏場で毎日1000羽以上の鶏が死んでいる」。雪が降る中を、同僚とワゴン車で農場に急いだ。到着した農場にはだれもいなかった。
衛生所によると、別の職員が衛生所から姫路市の浅田農産本社に何度も電話をかけた。鶏舎への立ち入りを求めるためだが、責任者は不在だった。午後11時、浅田秀明社長にようやく連絡が付いた。浅田社長は「会長に判断を仰ぎたい」と答えた。10分後、浅田肇会長から衛生所に電話があった。「20日ごろから毎日1000羽、1万羽近く死んでいる」と話したという。
午前5時、衛生所の簡易検査の結果、鳥インフルエンザは陰性反応だった。しかし、獣医は鶏の大量死を目の当たりにしており、安ど感はなかった。
4時間後、鶏が持ち込まれた府中央家畜保健衛生所(城陽市)の検査で陽性反応が出た。府の担当部局に緊張が走った。南丹家畜保健衛生所も防疫作業などで忙殺される日々が始まった。
実は同衛生所は19日に船井農場に訪問調査していた。大量死が始まったとされる20日の前日。府によると、別の獣医が訪れたが、従業員から「異常なし」と聞いて引き上げた。府の幹部は「調査には法的強制力がなく、鶏舎の中に入れなかった」と残念がった。(京都新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040320-00000019-kyt-l26