2004年03月20日(土) 07時03分
仙台育英高の大量受験問題 もたれ合いの構図露呈(河北新報)
仙台育英高(仙台市宮城野区)が進学先の決まった3年生に、受験料を肩代わりし提携先の東北文化学園大(青葉区)を受験させていた。この大量受験問題からは、提携大の受験実績を上げ推薦合格枠を増やしたい私立高と、多くの受験者を受け入れ志願倍率をアップさせたい私大が互いの思惑でもたれ合う構図が透けて見える。(報道部・勅使河原奨治)
<先月下旬にわび状>
卒業式を控えた2月下旬、宮城野区の育英高生(18)の家に1通の封書が届いた。「進学指導の対応で多くの疑問と誤解が生じ、誠に遺憾」。育英高からのわび状だった。
生徒は昨年秋、推薦で志望大学の進学を決めていた。ところが、12月、育英高は進学決定者を集め、翌年2月の学園大の受験を指示する。
学校は「受験は模擬試験と同じで、合否判定から除外されている。受験料も学校が持つ」と説明。生徒は「その通りにしないと推薦が取り消されると思った」と、圧力を感じ指示に従った。
<文科省と県が指導>
学園大の2004年度の平均志願倍率は5.5倍と、大量受験により約1.0ポイント上昇した。大学の人気指標である倍率が水増しされた疑いがあるなどとして、文部科学省と宮城県はそれぞれ学園大、育英高に中止を指導。両校とも受け入れた。
育英高の瀬戸信男教頭は、大量受験によって受験実績を上げ、推薦合格の増枠につなげたい思惑があったことを否定しない。「将来的に学園大の付属高的存在になりたかった」とも話している。
両校が業務提携したのは01年7月。育英高の運営法人幹部と学園大の関連会社幹部が大学の同窓だったことが「縁結び」のきっかけの一つになったとも言われる。
学園大の佐々木晴夫副学長は「少子化の進展で受験者が減るのを心配した」と、受験者増が見込める提携効果に期待したことを認めている。
育英高の学園大受験者は年々増え、それに伴って同大の推薦合格枠も増加し04年度は43人に。両校の思惑が実を結んだ。
教育評論家で新潟産業大名誉教授の中村忠一氏は「見せ掛けの倍率をつくり人気を高めたい大学に、私学のよしみで高校が協力した構図」と指摘する。
<「利用されたのか」>
「私立高のセールスポイントは進学率と人気大学への合格実績」。ある育英高幹部は言い切る。その言葉を裏付けるかのように、育英高は成績優秀な生徒に受験料を提供し、大学の複数受験を誘導していたことも明らかになった。
複数受験したという育英高生の父母は「子どもが高校の名声を上げるために利用された気がする」と語る。
中村氏は「複数受験の誘導は多くの私立高で行われているのが現実」とした上で「受験料を提供してまで合格実績を上げるのは教育機関として許されない」と話している。
[仙台育英高の大量受験問題] 育英高は、推薦合格などで他大学進学が決まっていた3年生約260人に3万円の受験料を肩代わりする約束で東北文化学園大の2004年度入試を受けるよう指示。7割に当たる184人が受験した。授業料を納めた生徒には、同高から預かり証が渡され受験後に返金された。受験料は同高OBらでつくる教育振興会が拠出していた。同高によると、受験動員は学園大が開学した1999年度入試から始まり、04年度開学の千葉科学大(千葉県銚子市)でも行われた。
受験を指示する文書が作成された背景に、少しでも多くの生徒を集めたい私大、私立高の思惑が横たわっていた
(河北新報)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040320-00000008-khk-toh