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論語のなかに、「鶏を割くに、いずくんぞ牛刀を用いん」とある。ことわざにもなっていて、「物ごとに対処する方法が間違っていることのたとえ」に用いられる◆田中真紀子元外相の長女の私生活を報じた「週刊文春」最新号が出版禁止の仮処分を受けた問題で、東京地裁が文春側の異議申し立てを退けた◆著名な政治家を親にもっても、ひとりの私人である。当人の意思に反して私生活を人目にさらされるいわれは毛頭ない。問題の記事は私人のプライバシーを不当に傷つけた、有害にして無益な針である◆小さな一本の針も刺された当人には、傷がうずいて夜も眠れない残酷な凶器になる。その針を取り除く道具として使われた出版差し止めの仮処分が、文春側の目には、「表現の自由」を弾圧する場違いに巨大な牛刀と映ったらしい◆嘘(うそ)を書かれて傷ついた名誉は、真実を書き直させることによって回復できる。知られたくないプライバシーを書かれてしまった後で、心の傷を消し去る手段はない。針の害毒を事前に除こうとした仮処分は、道具として適切なメスであったと言わざるを得まい◆一部のメディアが人のプライバシーを売り買いの種にしつづけるならばやがて、「表現の自由」を制限せよ、という危険な声が生まれるだろう。そこに待っているのは本物の牛刀である。