2004年03月17日(水) 12時04分
回収か販売か、週刊文春に割れる対応(読売新聞)
出版・販売禁止命令でキヨスク店頭から回収される週刊文春(JR新橋駅で)
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「週刊文春」に販売差し止めを命じた東京地裁の仮処分決定から一夜明けた17日朝、首都圏の駅の売店や一般の書店には、すでに出荷されていた同誌3月25日号が一斉に並んだ。しかし、時間の経過とともに、駅の売店の運営会社などは「自主回収」に踏み切り、「販売続行」の方針を掲げる書店取次会社と対応は真っ二つに。
70万部超の売り上げを誇る大手週刊誌の発売前日に出た異例の司法判断に、売り手の混乱が続いた。
JRの駅構内で売店を運営する「東日本キヨスク」では、この日午前6時前後の営業開始と同時に、普段通り週刊文春の販売を始めた。
東京・千代田区の東京駅丸の内北口の売店には、早朝から同誌を買い求める通勤客の姿が目立ち、女性店員は「すごい勢いで、いつもの2倍ぐらい売れた。みんな、ほかの週刊誌には見向きもしなかった」と驚いた様子。
しかし同社は、同日午前8時半になって、「自主判断」として、首都圏にある約1600の売店などから、店頭に並んだ週刊文春を回収することを決め、各店舗に伝えた。
「裁判所の決定など17日朝になって分かったため、仕入れ先と協議して撤去を決めた」と同社の担当者。
港区の新橋駅内の売店に、この決定が伝わったのは午前9時すぎで、この日午前6時40分の開店からすでに用意した約190部のうち約160部が売れ、回収できたのは約30部だけだった。
この売店には、回収後も「文春はないの」などと買い求めに来る客が相次ぎ、説明にあたった店員は「販売中止になっているので」と申し訳なさそう。いつも同誌を買っているという40歳代の女性会社員は「報道で見たので、売っていないのかもしれないと予想はしていたが……」と語り、無職男性(77)は「やっぱり読みたい。大きいところは動きが早いので、小さいところをあたってみるよ」と話した。
また、都内の無職男性(74)は、「司法の判断ということだが、行きすぎのような気もするし、一方でプライバシーの問題もあるのだろう。ただ、読んでいないので分からない」と話した。
一方、営団地下鉄の売店157店を運営する「地下鉄トラベルサービス」では、当初、「回収命令が出ていないし、裁判所から何も言ってこないので、すでに用意した分については通常通りに販売をしている」と説明し、販売を続けていた。
だが、午前9時25分になって「他社の動向を見て」(同社商品販売事業部)、週刊文春の販売自粛を決め、店頭から撤去した。
出版取り次ぎ会社の対応も分かれた。
全国の書店やコンビニエンスストアに同誌を出荷している大手の「日本出版販売」では16日夜、文芸春秋から仮処分決定の連絡を受けた。だが、「売買契約はすでに完了しており、出荷も済んでいる」として特別な対応を取らないことに。
一方、同「トーハン」(同)では、「対応を検討している」段階だという。
◇
千代田区紀尾井町の文芸春秋本社では、17日午前9時半すぎから、浦谷隆平社長室長が、報道陣の質問に答えた。
浦谷室長によると、同社では、昨夜に引き続き午前10時から臨時の役員会を開き、今後の対応を協議。これに先立つ午前一時ごろには、取り次ぎ業者や主な一般小売業者に対し、地裁から決定が出されたが、これは一般小売店を拘束するものではないとする内容のファクスを送った。
浦谷室長は「売ってくれというものではなく、売ることを禁止するものではないというお知らせだ」と説明した。取り次ぎ業者などからの問い合わせや、返本などは確認されていないという。(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040317-00000004-yom-soci