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2004年03月17日(水) 01時54分

<週刊文春>販売差し止め仮処分に懸念の声毎日新聞

 田中真紀子元外相の長女の記事を掲載した週刊文春に対して東京地裁が16日、販売差し止めの仮処分を決定したことについて、専門家からは懸念する声が相次いだ。全国的な雑誌を対象にしたこうした決定は極めて異例。言論・出版の自由と「プライバシーの侵害」をめぐり、関係者に波紋が広がった。

 上智大の田島康泰教授(メディア法)は「裁判所は、田中真紀子議員の長女が純粋な私人で、プライバシー性の高い内容と判断して差し止めを認めたのだろう」と推測する。一方、「最高裁はプライバシーの侵害だけを理由とする差し止めはまだ認めていない。検閲につながりかねない問題であり、重大な要件を課さない限り、差し止めは認めるべきではなく、今回のケースも詳細な検証が必要だ」と問題点を指摘する。

 立教大社会学部の服部孝章教授(メディア法)は「東京地裁がどういう理由で差し止めを認めたのか分からないが、記事の内容がプライバシーの侵害であることは間違いなく、出版後に裁判で争っても、文春側は負けると思う」と指摘する。その一方で「ただ、これで差し止めを認めるのは疑問が残る。原告側にとっても、今週号は流通ルートに乗っているうえ、大手出版社の週刊誌の差し止めとして話題になることで、訴えの利益はあまりないのではないか」という。

 販売や出版の差し止めをめぐっては、最高裁大法廷が86年6月、北海道知事選の立候補予定者が月刊誌の中傷記事の事前差し止めを求めた「北方ジャーナル訴訟」で、「表現内容が真実でなく、被害者が著しく回復困難な損害をこうむる恐れがある時、例外的に認められる」との初判断を示した。

 同年9月には、清掃会社を脅して現金を受け取ったという記事を東京都内の地域新聞に掲載された東京都葛飾区の区議が、地域新聞の発行責任者を相手取り新聞発行の差し止めを求めた仮処分を申請し、東京地裁に認められている。92年11月には三重県の鈴鹿市長が怪文書に基づく新聞記事の事前差し止めの仮処分を申請し津地裁に認められた。

 中央大の堀部政男教授(情報法)は「北方ジャーナルに対して差し止めの仮処分命令の正当性を最高裁が容認した判例以来、地裁レベルでは数件の命令が出ていると思う。今回の記事を裁判所がどう判断したのかは不明だが、真紀子氏は公人でも娘は私人であり、プライバシー権が出版の権利より優先すると判断したのかもしれない」という。「しかし、こうした出版の差し止めは、極めて限定された条件で認められるべきだ。直前に販売を禁じられた文芸春秋側の損害も無視できない。結論を急ぐ仮処分の申し立てでは、被害事実を必ずしも厳密に証明することが要求されないから、結果として拙速な命令が出る恐れもある。文芸春秋側がおとなしく従うとは考えにくく、今回の命令が妥当だったかどうかが広く議論される必要がある」と語った。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040317-00000138-mai-soci