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店頭での商品やサービスの価格表示を消費税込みにする総額表示(内税)が4月1日から義務付けられるのを前に、小売業界は最終段階の準備に追われている。財務省は「消費者が払う金額が一目で分かる」と利便性を強調するが、店頭で混乱が起きる可能性もある。総額だけを表示する小売店、本体価格を併記する店など業界ごとに対応が分かれるほか、1円未満の端数処理の仕方で消費者が支払う総額が異なるケースもあるためだ。
◆追い込み
大手スーパー「ジャスコ」を展開するイオンは3月上旬、全国約270店舗で一斉に衣料品などの値札を本体価格だけが記された現在の表記から総額表示に変更する作業に入った。作業は、顧客が少ない時間帯や開店前や閉店後を使って少しずつ進められ、3月末までに残る約100店舗でも切り替える。各社とも準備作業は追い込みに入っている。
ビックカメラなどの大型家電量販店は1店舗だけで四十万—50万点の商品を扱い、値札やカタログの書き換え、レジシステムの変更などは大作業となる。
4月以前でも総額表示はできるため、大手百貨店では、2月に入荷した春物衣料の値札を総額表示に改め、イトーヨーカ堂は1月入荷分から衣料品に本体価格、総額の二種類の値札を付けている。
◆“便乗値下げ”
総額表示が義務化されても、総額より目立たない扱いであれば本体価格も表示できる。大手スーパーやコンビニエンスストアは、分かりやすさを優先して総額だけを示すが、定価販売が主流の大手百貨店は「総額1050円(本体価格1000円)」のように本体価格も付記する。
総額表示では、「980円」の値札は「1029円」となり、「割安感を訴える『98価格』が一転して割高感を与え、消費を冷やしてしまう」(大手スーパー)ことも心配される。
衣料品小売りの「しまむら」が、2月から本体価格をそのまま税込み価格に改め、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングも4月から全商品の価格を最大で4・8%値下げするなど、「98価格」を守るため、実質値下げに踏み切る企業も出始めた。デフレ下では「割安感」が消費動向を左右するだけに、総額表示にあわせた“便乗値下げ”はさらに続きそうだ。
消費者にとっては歓迎できるが、値下げが広がれば、「消費者物価指数を最大0・14%押し下げる」(BNPパリバ証券の河野竜太郎・経済調査部長)との試算もあり、デフレ脱却には逆効果になりかねない。
◆端数処理
総額(税込み価格)の計算で生じる端数処理については、小売り大手は百貨店が切り上げ、スーパーが切り捨て、コンビニが4捨5入と対応が分かれた。350円の商品(消費税5%分17・5円)は百貨店とコンビニは368円、スーパーは367円と表示する。
この商品を10個買うと、レジで支払う税込みの総額は3675円となるが、値札に表示された価格で計算すると百貨店とコンビニでは5円多く、スーパーでは5円少なくなる。百貨店は切り上げ分の5円をレジでは差し引いて「顧客とのトラブル回避」(三越)を優先する。
スーパーは切り捨て分の5円は店が負担し、客のつなぎ止めを図る。コンビニは扱う商品の単価が低く、切り捨てでは店の負担が大きすぎることから4捨5入を選択したため、レジでもこの5円は返さない。
端数処理が三者三様になったことで、消費者の側には混乱も予想される。三越は端数の扱いについて手引書を売り場の従業員約3万人に配るなど、各業界は店員教育にも追われている。(経済部 山本 正実、古川 肇)