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2004年03月12日(金) 01時55分

3月12日付・読売社説(2)読売新聞

 [タイヤ脱落]「あまりに遅い『構造欠陥』の公表」

 「構造上の欠陥」と認めるまでに、なぜ、これほどの時間を要したのだろうか。

 三菱自動車工業が製造したトレーラーなどの大型車で一九九〇年代以降、走行中にタイヤが脱落する事故が五十件も起きた。横浜市では一昨年一月、二人の幼子を連れて歩道を歩いていた主婦が、タイヤの直撃を受けて亡くなっている。

 横浜市の事故を受け、同社は部品を無償交換するなどの対策はとった。しかし原因については、一貫して「整備不良のため」だとし、国土交通省に届け出が義務づけられているリコール(無料回収・修理)の対象となるような構造上の欠陥はなかった、と説明してきた。

 この主張が、いまの時期になって違っていたと、同社から分社化して事業を引き継いだ三菱ふそうトラック・バス社が会見をして明らかにした。「技術的な要因を調べ、整備のみならず設計要因でも起こることが分かった」としており、国交省にはリコールを申し出た。

 車軸の回りのハブという部品に、きちんと整備したものでも亀裂が入る事例があることがわかったという。非は整備事業者やユーザーではなく、メーカー側にあったということだ。

 問題のハブについては、交換を終えた車両も多いというが、ユーザーや、脱落事故の犠牲者の遺族は、納得がいかないだろう。横浜市の死亡事故からも、二年以上が過ぎている。欠陥隠しとも見られかねない、余りに遅い対応である。

 三菱自動車工業が消費者からのクレーム情報を公表せず、組織的にリコール隠しをしたとして、当時の副社長らが罰金の略式命令を受けたのは、まだ三年前のことだ。この事件を契機に道路運送車両法が改正され、リコール隠しの罰則が大幅に引き上げられもした。

 この教訓を同社が忘れるはずはないだろうが、タイヤ脱落という重大なトラブルへの認識が甘すぎたのではないか。国交省も「設計、製造上の問題は否定できない」とし、判明した段階ですぐリコールすべきケースだとしている。

 同種の事故が相次ぐ過程で、三菱側はどのような原因究明をしてきたのか、国交省は詳細に調べる必要がある。

 横浜市の事故については、神奈川県警が構造的な欠陥を放置した疑いがあるとして捜査中だ。すでに三菱自動車工業の本社などを業務上過失致死傷容疑で家宅捜索しており、今後、刑事事件に発展する可能性がある。

 自動車メーカーにとって、「安全」への信頼こそすべてだ。三菱側の誠実な対応が求められる。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040311ig91.htm