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二年前の二〇〇二年一月十日に横浜市内の県道で奇妙な事故が起きた。走行中のトレーラーの左前輪が突然はずれ、わきの歩道の前方を歩いていた神奈川県大和市の主婦、岡本紫穂さんを五十メートルも追いかけて直撃した。岡本さんは死亡し、一緒にいた当時四歳の長男と一歳の二男もけがをした。
歩道にまで被害が及ぶ珍しいケースだったので、直ちにタイヤと車軸をつなぐハブといわれる部分に欠陥があるという疑いが出た。
しかしメーカーの三菱自動車工業(現在は三菱ふそうトラック・バス)は、欠陥ではなく整備の不良だと突っぱねた。
同社は前年二月に乗用車、商用車を含め百五十万台のリコールを余儀なくされていた。この時、ユーザーから苦情があれば修理しただけで、運輸省(当時)に届け出なかった。後に道路運送車両法違反(リコール隠し)で摘発を受けた。
そこへ、また欠陥車が出たのでは、イメージダウンが大きい。メーカーは「整備不良のため」と責任を転嫁したが、ユーザーやメンテナンスの整備会社はたまらない。
一九九二年以降、ハブの欠陥とみられる事故が五十件以上発生している。このユーザーには連絡して自主的に修理したというが、リコールによって強制的に修理するのとではユーザーの受けとめ方が違うし、その間に事故が起きる。リコールの公表が早ければ、事故は起きなくてすんだはずだ。このために道路運送車両法が強化されたのである。
神奈川県警は横浜市の事故について、業務上過失致死傷の疑いで強制捜査に乗り出し、メーカーの責任を追及している。周囲から追い詰められた結果、メーカーとして判断を一転した。あまりに遅すぎる。
二〇〇〇年に欠陥隠しで経営トップが交代した。その痛い経験の反省を生かせなかったのは残念だ。
三菱自動車は昨年来、米国での自動車ローンの焦げつき、国内販売の低迷などで業績不振が続いている。筆頭株主のダイムラークライスラーや三菱グループのテコ入れによって、経営再建努力を続けている最中である。
正念場での不祥事だが、ユーザー、三菱ファンの期待も多い。自らの欠陥を素直に認められない硬直した企業組織をこの機会に大改革し、災いを福に転じてほしい。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040312/col_____sha_____003.shtml