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2004年03月11日(木) 01時13分

3月11日付・読売社説(2)読売新聞

 [仮退院]「平穏な社会復帰を祈りたい」

 一九九七年に神戸市で起きた連続児童殺傷事件は、犯行時十四歳という少年の年齢と残忍な行為が社会に衝撃を与えた。

 それから約七年、医療少年院に収容され二十一歳になっている加害者の男性が、仮退院した。

 仮退院は収容期間満了前の一時的措置だ。完全な社会復帰ではない。保護観察が今年末まで続き、その間に問題があれば、少年院に戻される。

 男性が自ら犯した罪の重さと責任の大きさを自覚し、本当に更生したのかどうか。なお慎重に見極めることになる。

 長崎市の男児誘拐殺人、大阪府河内長野市の家族殺傷など、少年の凶悪犯罪が今も絶えない。事件後の処遇は、再発防止への大きな課題だ。

 特別プログラムの下で、男性は矯正教育を受けた。その期間も約六年半と、これまで例のない長期にわたった。性的サディズム傾向や反社会的価値観が消え、贖罪(しょくざい)の意識も示している、という。

 しかし、あくまで拘禁された施設内でのことであり、刺激的な情報があふれる社会に出た場合と同一視はできない。

 年間四、五千人に上る少年院仮退院者で保護観察中に非行や犯罪を重ねる率がここ十年、ほぼ20%を超えている。

 「男性がまっとうな社会生活を営めるのかどうか」と語る被害者遺族の不安は無理からぬところだろう。

 男性は仕事に就き、保護観察官や保護司の指導を受けながら生活する。適切な更生への教育を続ける必要がある。

 仮退院に際して、関東地方更生保護委員会が、その事実と更生状況、今後の居住地が近畿地方でないことなどを、被害者遺族に伝え、併せて公表した。

 成人の場合は、受刑者の出所などについての情報を被害者側に通知する制度が設けられているものの、少年事件では前例のない措置だ。

 社会復帰の妨げにならないよう、プライバシー保護などの配慮が必要だが、事件の重大性や被害者感情を考えた適切な情報公開として評価したい。

 低年齢化と凶悪化に歯止めがかからない少年犯罪への対処も重い課題だ。

 二〇〇一年四月に改正少年法が施行され、故意に人を死なせた十六歳以上は原則的に刑事裁判の対象となり、刑罰対象年齢が十四歳以上に引き下げられた。

 施行後、殺人事件では刑事裁判を受ける割合が、以前と比べ倍増した。悪質な強盗婦女暴行事件で十五歳の少年が初めて起訴され、実刑になった。

 少年の育成には保護ばかりでなく、自らの責任を自覚させ、規範意識を植え付けることが重要だ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040310ig91.htm