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少年院からの仮退院は更生指導の最終段階だが、あくまでも途中経過である。その意味で、七年前、神戸市で起きた児童連続殺傷事件の加害青年(二十一歳、事件当時十四歳)の仮退院を、法務省が被害者側に通知して公表したのは異例の措置だ。立ち直りへの悪影響も考えられるので一般化すべきではない。
だが、事件の重大性、社会が受けた衝撃、遺族の気持ちなどを考えると、例外として理解できる。
加害者の社会復帰で遺族には新たな不安が生まれるかもしれない。あれだけの事件を起こしながら七年で社会へ戻れることに、遺族として割り切れなさも残るだろう。
法務省など関係当局は、遺族が安心して暮らせるよう可能な限り元少年の情報を提供してゆくべきだ。同時に、刑罰の目的や少年犯罪に関する法制度の趣旨などを十分説明して理解を求めなければならない。
心配なのは元少年を迎える社会の反応である。一部メディアや心ない人々が元少年を捜し回ったりして騒ぎ立て、社会復帰の障害になることが懸念される。
青年の精神状態は落ち着き、集団生活にもとけ込んでいるという。贖罪(しょくざい)意識も芽生え、再犯の恐れはなくなったともいわれる。
私たちは専門家の判断を信頼し、青年が善良な一市民として普通の社会生活に戻れるよう見守りたい。重大ではあっても、少年時代の一時の過ちには報復するのではなく、大人が支えて立ち直らせるのが成熟した社会の対応である。被害者に対する支援がそれに劣らず大事なことは言うまでもない。
事件当時、一部メディアは興味本位で無責任な報道をし、インターネットでは加害者の実名や顔写真さえ伝えられた。再びこのようなことが起きてはならない。関係者の自戒とネット管理者の警戒を求める。
七年間を振り返って、私たちは事件をきちんと総括できているか疑問が残る。異常性のみに気をとられ、背景には社会の大きなひずみがあることを認識できていない。最近は少年犯罪の増加、凶悪化ばかりが強調され、取り締まり強化で対応しようとしている。
しかし、少年犯罪では少年を生み出した社会の責任も問われている。仮退院を機にこの点について根本から考えたい。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040311/col_____sha_____002.shtml