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2004年03月10日(水) 15時16分

社説2 少年事件でも情報の公開を日経新聞

 1997年に神戸市須磨区で連続して児童を殺傷した、当時14歳の男性が、医療少年院から仮退院した。年末までの保護観察期間を無事終えれば、社会復帰する。「一連の非行は予後の厳しさを示唆する種類のもの」(家裁審判に採用された精神鑑定書)だったが、加害者男性は罪の重さを自覚し再犯の恐れもなくなった、と法務当局が判断した。

 少年院への収容は犯罪者に与える刑罰ではない。贖罪(しょくざい)意識を呼び起こし、善良な社会生活を送る能力を身につけさせる教育が目的であり、今回の男性の収容期間も「十分な更生がなされるまで」と神戸家裁は勧告していた。

 事件被害者の遺族たちは「6年で人間の心を取り戻しただろうか」「本当に更生したかは、今後判断されるべきだ」と言う。当然の思いだ。

 加害者男性はこれから長い「償いの道」を歩まなければならないけれども、矯正教育を施し社会復帰を決めた当局には男性を支援し、被害者関係者の疑念・不安が薄らぐようにする義務がある。2000年に大分県で発生した一家6人殺傷事件で、被害者遺族が犯人の少年を相手に損害賠償を求めた裁判は「少年が35歳になるまで居住地や反省の状況を被害者側に通知する」などの条件で和解した。被害者側の求めに応じて同じ措置が取れる制度を設けることも、考えるべきではないか。

 審判を担当し、仮退院に際し男性に「地道な努力を重ねれば、社会もそれに応えてくれる」とメッセージを送った井垣康弘神戸家裁判事はこう提言している。「少年事件はなるべく秘密にし、教育して、こっそり社会に戻す運用をしてきた。国民に見えないところに少年を抱え込んでいたため、ときどき凶悪犯罪が噴火すると、国民は少年たちに不安を持つ。必要な情報は公開すべきだ」

 今回の仮退院で法務当局が異例の発表をしたのは、評価に値する。さらに歩を進め、被害者側にも社会にも少年事件に関する情報をより多く開示するよう望みたい。国民が裁判官とともに刑事裁判の審理に加わる裁判員制度が実現しようとしている今、少年の「罪と罰」についても国民はそれぞれに考えなければならない。その材料が要る。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20040310MS3M1000J10032004.html