2004年03月10日(水) 06時33分
<テレビ視聴>長時間見る子ども 言葉の発達に遅れ(毎日新聞)
日本小児科学会(衛藤義勝会長、約1万8000人)が1歳半の子供の親を対象にした調査で、テレビやビデオを長時間見ている子供は、そうでない子供に比べ、言葉の発達が遅れる割合が2倍にもなることが分かった。同学会は2歳以下の子供にテレビを長時間見せないよう呼びかける提言をまとめ、4月に公表する。
小児科学会の「こどもの生活環境改善委員会」が昨年、東京都や岡山県など3地域で、1歳半の健康診断の対象児(保育園児を除く)の親計1900人にアンケートした。子供が1日にテレビを見る時間を4時間より多いか少ないか、さらに子供が直接見ていなくても家族がテレビをつけている時間が8時間より多いか少ないかで四つのグループに分けた。通常、1歳から1歳半の子供は「主語」「述語」の2語文で話すことから、2語文が話せない子供の割合を四つのグループで比べた。
この結果、「子供が4時間未満で、家族が8時間未満」という最もテレビを見る時間が短いグループでは、子供に言葉の発達の遅れがあったのは約15%だった。これに対し、「子供が4時間以上で、家族が8時間未満」では約18%、「子供が4時間未満で、家族が8時間以上」が約23%、「子供が4時間以上で、家族が8時間以上」が約30%。最も視聴時間が長いグループは、最も短いグループに比べると言葉の遅れが2倍になった。
このため、提言は「乳幼児にテレビ・ビデオを長時間見せるのは危険です」とした上で▽2歳以下の子供には、番組内容にかかわらず長時間見せない▽授乳や食事の間はテレビを消す▽子供の部屋にはテレビ・ビデオを置かない——などを盛り込む。
既に小児科の開業医ら約6500人でつくる日本小児科医会(師研也会長)が今年2月に、2歳までのテレビ・ビデオ視聴を控える提言をしており、小児医療の現場からの相次ぐ警告となる。【遠藤和行】
同委員会担当理事の清野佳紀・大阪厚生年金病院長の話 2歳以下は周りの環境に適応しようとする大切な時期。一方通行の情報を与えられると、コミュニケーションを取る手段である言葉が必要なくなる。2歳以下の子供にはできればテレビを見せないことを勧めたい。
▽汐見稔幸・東京大教授(乳幼児教育)の話 赤ちゃんは親の言葉をまねたり、親とのコミュニケーションが楽しいと体感しながら発達していく。その大切な時期にテレビを見せ過ぎると、かかわる時間が減る。
ただ、母親の心構えの問題に集約されると、孤独な状況で子育てをする母親は大変つらい。子育て中の家から500メートル以内に、赤ちゃんとのかかわり方を教えたり母親同士のたまり場を作るなど、社会が必死になって母親の孤立を減らす努力をしなければならない。(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040310-00000112-mai-soci