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■「失敗作」
農水省本館四階の衛生管理課が「不夜城」と化している。同課の栗本まさ子課長は「家には帰ってますよ」と話すが、課員の目は充血気味だ。同課は牛海綿状脳症(BSE)も担う。鳥インフルエンザ拡大で仕事は倍増した。別の関係部局の職員は「BSEが国内で初めて出たときより騒ぎが大きい」と漏らす。
大混乱の引き金を引いたのは、「防疫対応マニュアル」だ。マニュアルがなかったBSE問題の教訓から、同課が厚生労働省や防疫問題の専門家と一年がかりでまとめた力作だ。国際獣疫事務局(OIE)の基準などを参考に「どこからかウイルスが大規模農家に侵入し感染が拡大」を想定した手引書になるはずだった。だが−。
三十キロメートルという厳し過ぎる移動制限区域、移動制限期間中に産まれ続ける卵の扱い…。マニュアルから次々とほころびが露呈する。
「日本では(感染が)起きないと、平和ボケした時に作った」。作成メンバーで農水省家禽(かきん)疾病小委員会委員長の喜田宏・北海道大学獣医学部長は、マニュアルが事実上失敗作であることを認める。喜田氏は「移動制限の三十キロの根拠は、ハエが飛ぶ可能性の距離だ。世界的には十キロか五キロが普通だ」とも。
■低い優先度
マニュアルが現実離れした原因は明白だ。
牛、豚、鶏−。農水省による“格付け”だ。畜産物で重要視されるのはやはり牛だ。育成期間が半年程度と長く、えさ代がかさむ上に受精しない場合もある。豚も鶏より手間がかかる。
鶏は毎日産卵し出荷まで二−三カ月と安上がりだ。だから「例えば仕入れ二百円程度のものを、誰が五千円かけて治すのか」(農水省幹部)という扱いに。その結果、病気になれば即殺処分という段取りになる。
これに対し、養鶏業界も企業化や大規模化で行政側の「無関心」に対抗し、国の補助金や族議員に頼らない体質を構築。「政官」と「民」の珍しい非癒着体制が完成した。農水省生産局の食肉担当者は「養鶏業界は政策に頼らなくてもいい。えさ代も抑えられるし天候に左右されない。もうけやすい。彼らが頼らなかったように国も干渉しなかった。政治も同じだ」と明かす。
今月二日、自民党の農水族が遅ればせながら「養鶏振興議連」の設立総会を開き、業界側から実情を聞いた。だが出席したある議員は業界関係者を見渡し「長年やっているが、見たことのない顔ばかりだ」と絶句したという。
■読めぬ終息
さて京都府丹波町では六日、雪交じりの雨が降る中、自衛隊が出動して処分した鶏を埋めるための穴掘り作業を続けた。しかし業者が当初、事実上発生を隠した影響で感染経路の確定が困難な状況だ。喜田氏は「そもそも封じ込めはできない」と悲観的だ。農水省側もいつ終息するのか、はっきりとは読み切れていない状態だ。
農水省幹部は業者の感染隠しを指し「すごい変化球だ。手が出ない」とあきらめ気味の表情を見せながら付け加えた。「これがさらに(宮崎と鹿児島の二大産地を抱える)九州に広がっていったらどうするのか。怖い話だ」。すでに行政は方向かじを失っているようだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040307/mng_____kakushin000.shtml