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街の牛丼チェーン店から、牛丼が大方姿を消して約1カ月。それでも、牛丼が食べたい人は今、築地を目指す。
朝7時、東京・築地市場内にある吉野家は15席しかない。いつもは市場の男たちでいっぱいになるが、このところ「一見さん」が目立つ。
フリーターの瀬戸口佑也さん(23)は、久々に大盛りと向き合っていた。前の晩、寝付けないでいるうちに「どうしても牛丼が食べたくなった」。悶々(もんもん)としたまま朝を迎え、東京・国立市から始発電車で来た。
「週2」は欠かさなかった。2月11日のファイナルデーは、新橋店で迎えた。初めての築地店。店員の素早さにまず「さすが」とうなり、あの味を堪能した。
長崎県・波佐見焼の陶芸家橋本和也さん(39)は、仕事で上京した機会に立ち寄った。
東京都台東区の清掃業小川恵一さん(37)は、長男(5)を朝5時に起こして登園前に連れてきた。仲良く並盛りを食べて記念写真も撮った。
「百年以上にわたり守り続けてきた鍋の火を、なんとか絶やさずに大切にしていきたいと考えました」。店にはこんな張り紙がある。
1899年創業の吉野家は市場とともに1926年、築地に店を構えた。つゆが多めの「つゆだく」や「ネギだく」などこだわりの品々もここで生まれた。
これまで使っていた米国産牛肉はBSE問題で輸入停止になったものの、同店だけは国産牛で牛丼の灯(ひ)を守る。並盛りは280円から500円に値上げしたが、客足は好調という。
しかし、全社的には逆風であることは間違いない。2月の売り上げは、全体で前年より14%減った。
「牛丼を除いた吉野家は、最もホットな後発の挑戦者」
安部修仁社長は、会社の現状をそう評する。
1日から豚丼を導入するなど新メニューに挑んでいるが、牛丼の呪縛を解き放つのは容易ではない。
同社は牛丼にほとんどの勢力を費やす「単品主義」をとり続けてきた。並盛りの値段を400円から280円に下げて「デフレ競争」に参戦したのも、牛丼に絶対の自信を持つゆえの戦略だった。しかし今、それが足かせとなっている。
「ガリバーを追い越せ」
ライバル店にとって、現状は苦しいながらも、トップとの差を詰める千載一遇の機会でもある。もともと多品目主義で差別化を図っていた利点を生かし、攻勢をかける。
業界2位の「松屋」は「『豚めし』が好調。売り上げは全メニューの5割近い」。3位の「すき家」でも、「豚丼」が牛丼にかわる主力となった。4位の「なか卯」も、牛肉に万が一の事態が起きた時のために開発していた「豚どんぶり」を満を持して投入した。
5位の「神戸らんぷ亭」は、豪州産牛肉で「牛どん」主義を貫く。
吉野家の安部社長は、黄金のメニュー復活へ、日米交渉に気をもむ。
しかし、ライバル店の思いは微妙に違う。なか卯の北野安夫社長は「消費者は安心できる牛肉でないと食べられない。輸入停止が1、2年続いても仕方がない」。すき家を展開する「ゼンショー」の小川賢太郎社長も、全頭検査なみの対応を米国政府に求める日本政府の姿勢を「強く支持する」と強調する。
「牛丼復活」
街に、この文字が踊るのは、いつのことか。
(03/04 19:53)