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[裁判員法案]「これで『司法改革』になるのか」
国民が裁判官と共に刑事裁判に参加する「裁判員制度」の創設など司法改革関連法案が、閣議決定された。
国民の参加を義務付ける裁判員制度は、「身近な司法」を目指した司法改革の柱だ。将来の刑事司法の根幹となる、極めて重要なものだ。
しかし、法案の内容は、それにふさわしいものとは言えない。
いかに国民が参加しやすい仕組みにするか、などをはじめ、解決すべき基本的な問題が山積したままだ。
制度自体も、司法制度改革審議会が約三年前、最終意見書で、「国民の健全な社会常識を刑事裁判に反映させる」とした提言から離れてきている。
国会審議では、制度の目的から運用の仕方まで、問題点を徹底して洗い出す必要がある。制度自体を練り直すくらいの大胆な修正も辞すべきではない。
選挙権を持つ二十歳以上の国民から無作為に選ばれる裁判員は、裁判官と共に殺人など重大な事件を審理し、有罪、無罪、量刑まで、多数決で決める。新制度は公布後五年以内に施行する。
この制度の検討が不十分なことは、法案策定の過程が如実に示している。
制度の骨格は、裁判官と裁判員の構成比だが、政府の司法制度改革推進本部は昨年末、意見を集約できなかった。
法案は、「裁判官三人、裁判員六人」を原則とし、例外的に「裁判官一人、裁判員四人」とする。これは、自民党と公明党の与党協議が難航した末に決まったものだ。例外とされた構成比は、最終意見書に全く触れられていなかった。
裁判員制度が導入された場合、裁判員の負担は重い。
法案では、正当な理由なく断ることができず、辞退できるのは、高齢や重い病気、家族の介護、育児などで、仕事では「事業に著しい損害が生じる恐れのある場合」に限られる。守秘義務違反には、一年以下の懲役などが科せられる。
こうした厳しい義務を課しながら、閣議決定直前の最終段階で、“骨抜き”にするような修正が行われた。
自民党総務会が法案に難色を示した結果、「自分には人を裁けない」などの個人の「思想や信条」を理由に辞退できる条項を政令で加えることになった。この条項で、辞退者の増加が予想される。
そうなれば、幅広く国民から裁判員を選ぶという制度の趣旨に反し、不公平感も生じかねない。こんなちぐはぐな法案では制度への信頼感も生まれない。
国民的視点に立った深い論議が、余りにも不足している。拙速を戒め、国会で議論を尽くさなければならない。