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■準備期間
「政府には『最低でも五年は必要』と要望してきた」。政府の司法制度改革推進本部と折衝を重ねてきた最高裁の担当者は振り返る。「やるべきことを積み上げると、どうしてもそれぐらいの時間はかかる」
戦前に実施された陪審制度は、一九二三年の法案成立から五年の準備期間を経て始まった。当時の政府はこの間、講演会を三千回以上開催するなど制度の周知に努めた。だが、さまざまな要因から陪審制度は定着せず、戦時中の四三年に停止されている。
こうした経緯などから、政府は「裁判員制度の趣旨が、国民の間に浸透するには一定の時間が必要」と強調する。だが、法曹関係者は「国民の理解よりも、問題なのは職業裁判官や検察官など法律のプロの方の意識改革だ」と指摘する。
■審理短縮
国民が参加して裁判を行うには、審理に時間がかからないことが前提条件だ。政府の検討会では「二−三日。長くても一週間」との目安が示されたが、そのためには現行の審理の姿を大きく変える必要がある。
最高裁の二〇〇二年の統計によると、刑事裁判の一審の平均審理期間は三・二カ月。被告が否認した事件に限ると、九・四カ月。これでは会社員や育児に忙しい主婦らが、裁判員として参加することはとても無理だ。
ではどう短縮するか。現行制度の枠内で、毎週一回程度開廷する「集中審理方式」が試行されている。現行は月一回程度の開廷が普通で、それに比べればかなりのハイペースだ。しかし、この方式を経験したある弁護士は「今やっていることを凝縮し、一週間で終わらせるのは不可能だ。裁判員制度では、争点整理など、公判前に十分な準備手続きをするから大丈夫というが、本当だろうか…」と懐疑的だ。
■辞退理由
裁判員を辞退できる理由として、「思想・信条の自由」が別途、政令で加えられることになった。自民党が関連法案了承の条件として掲げたためだ。
同党総務会では「国民負担があまりにも過大」「今夏の参院選にもマイナスになる」などの慎重論が相次いだ。しかし、法曹関係者は「こんなあいまいな理由がまかり通ると、(裁判員の)辞退者が続出してしまう」と指摘する。
「そもそも、どうやって個人の思想・信条を計るのか?」。この疑問に対し、政府関係者は「最終的には裁判官の判断にゆだねるしかない」と苦しい説明だ。
政令の具体的な文言が決まるのは、法案成立以降になるが、裁判員制度の推進派からは「制度の趣旨がねじ曲げられてしまう」と警戒の声が出ている。
■検察審も罰則強化
裁判員制度で影響を受ける検察審査会制度。一般市民からくじで選ばれる審査員の守秘義務違反の罰則は「一万円以下の罰金」だが、裁判員の守秘義務違反の罰則と同じ「懲役一年以下または五十万円以下の罰金」に引き上げられる。
検察審査会は、検察が不起訴処分とした事件について、判断の是非を市民の視点から審査する機関。今国会で裁判員制度の関連法案とともに、検察審査会法の改正案も提出される。
改正案は、審査会の二度目の「起訴相当」の議決に法的拘束力を与える一方、審査員の守秘義務違反の罰則強化も盛り込む。
任務を終えた元審査員も元裁判員と同様に守秘義務を課す。
政府は「国家公務員法を参考にした」と説明するが、国家公務員法の守秘義務違反の罰則は「懲役一年以下または三万円以下の罰金」で、こちらは改正の動きはない。
ある審査員経験者は「審査員が秘密を漏らしてトラブルになったことはないはずなのに…」と批判。法曹関係者も「裁判員制度こそ、検察審査会制度の罰則レベルに合わせるのが筋だ」と指摘している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040302/mng_____kakushin000.shtml