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札幌医大の晴山雅人教授(放射線医学)も「現状の医療被ばく線量が即、発がん率を高めることはないだろう。必要な検査は受けてほしい」と、いたずらに検査に不安を抱かないよう忠告する。ではどうしたらいいのか。
民間団体「原子力資料情報室」の渡辺美紀子さんは「問題は無駄な検査が行われ、無駄に被ばくすること。本当に必要な検査かどうか、検査によって、どれくらい被ばくするのか、まず医師に聞くことです」とアドバイスする。
「そうすることで、医師にも被ばく線量をきちんと把握し、患者に説明する責任を認識してもらうことができる。とりあえず、撮っておきましょうという医師側の安易な姿勢を改めることにもつながる」と話す。
渡辺さんはさらに「私たちのところにも六十スライスものCT(コンピューター断層撮影法)を撮ったが大丈夫かなどの相談の電話がかかってくる。本当に必要な検査もあるのだが、十分説明が行われていないために患者は不安になっている。医師は検査の必要性を見極め、患者にインフォームドコンセント(十分な説明と同意)を経てから行うようにしてほしい」と注文する。
一方、順天堂医院放射線部の伊津見栄重技師長は、患者側の心得をこう説く。
「胃や腸の検査は内視鏡や超音波の検査に代替できないか医師に聞いてほしい。病院を移って一カ月以内に同じエックス線検査が行われそうなときは『前の病院のデータを借りて』と求めるべき。資格外の看護師などが検査を行おうとしたら、『資格外では』とそれとなく言ったほうがいい。生殖器は特に鉛で防護する必要があるので、『プロテクターを貸して』とはっきり要求してほしい」
さらに企業などへ健診車が出向くエックス線検査も「要注意」と伊津見技師長は付け加える。
「これは『間接撮影』と呼ばれ、縮小写真が撮れて処理も速い半面、病院などで実物大の写真処理をする『直接撮影』に比べ被ばく線量が40%前後多くなる」からだ。「できれば病院などで直接撮影を受けた方がよい」という。
育ち盛りで細胞分裂が盛んな子どもや胎児は被ばくの感受性が成人より高くなるので、さらに注意が必要。晴山教授は「子どもは成人より白血病や甲状腺がんの発症率が三倍前後高い。できるだけエックス線検査は避けたほうが無難だ。女性の下腹部の検査は月経開始日から十日の間に」と忠告する。
■超音波・MRIなどの代替案
CTより撮影時間は長くなるものの、MRI(磁気共鳴画像装置)で代替するのも選択肢。「脳や脊髄(せきずい)についてはCTより有効。最近は肝臓にも有用性が認められつつある」(晴山教授)
ただ医療現場でも被ばく量低減に向けた取り組みは進みつつある。
日本放射線技師会の中村豊理事は「CTの被ばく線量は確かに従来のエックス線診断より高いのは事実、会としても低減に努めている」と話す。同会は二〇〇〇年にガイドライン(低減目標値)を策定。低減への取り組みを積極的に進めている診療グループ、病院を対象にした認定制度設立に向け準備をはじめている。また、機器の進歩に合わせガイドラインの見直しも進めている。
東京慈恵会医大の福田国彦教授(放射線医学)は、適正な検査を進めるために「国はCT一台当たり一定数の放射線科医を配置する義務付けを」と、提言する。そして「欧米並みに画像診断報告書作成を義務づけることも必要だ。また医療被ばくの蓄積が長期的にどんな影響をもたらすのか知るためにも、個人の検査履歴をデータベース化していくことも課題だろう」と話す。
(この企画は、飯田克志、鈴木久美子、藤英樹が担当しました)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040301/ftu_____kur_____001.shtml