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2004年02月29日(日) 02時10分

2月29日付・読売社説(2)読売新聞

 [鶏の感染症]「通報の遅れが事態を悪化させた」

 山口、大分県に次ぐ三例目だが、大量死だ。しかも、感染した鶏が移動していたのがわかったのは、国内で初めてだ。

 京都府の養鶏場で、鳥インフルエンザにより鶏が二十八日までに約七万羽が死亡し、兵庫県の処理場に出荷された鶏の感染も確認された。

 大量死が始まったのは、二十日ごろからだが、京都府が匿名の通報で事実を確認したのは、一週間後だった。この間に多量の卵と、食用の生きた鶏が出荷された。出荷先は五府県に及んでいる。

 鳥インフルエンザに対処するには、早期発見と封じ込め以外にない。だがこの業者は、死因を調べた獣医師が「腸炎」と診断したため、通報は不要と判断し、出荷を続けていた、という。世界中で感染が問題になっている最中だ。社会的責任感と危機意識が薄すぎないか。

 京都府は専門家による第三者委員会を発足させ、一連の経緯の究明を急ぐ方針だ。国、関係自治体、業界団体も連携して、徹底した検査と感染の拡大阻止に全力を挙げねばならない。

 昨年九月に農水省が作成した防疫マニュアルだと、自治体は養鶏業者に対し、感染が疑われる事例が発生したら、直ちに通報するよう周知するとしていた。これが徹底していなかった。速やかな通報を改めて指導すべきだ。

 家畜伝染病予防法では、伝染病や疑いのある家畜を診断した獣医師や所有者に通報義務を課している。だが、獣医師が「腸炎」と診断した今回のような場合、義務違反となるか微妙だ。通報を促すような法律の見直しが必要ではないか。

 養鶏業者は、通報を怠った理由を、防疫マニュアルで示された特徴的な症状がなかったから、とも話している。マニュアルの見直しも考えるべきだろう。

 予防法では、家畜の処分に伴う損失は国が補償することになっているが、従来の例では評価額が低く抑えられ、補償額も少ない、と業者団体は指摘する。その不安が通報の遅れの一因なら問題だ。

 今回の鳥インフルエンザで、山口県では特例として、周辺の養鶏業者の損失を実際の額と見合う形で、国と県が折半して補てんした。過失のない業者への適正補償の制度化は、考慮されていい。

 肝心の感染経路は、過去の二例も含めて不明のままだ。その解明が、根本的な問題の解決につながる。農水省は、アジア諸国とも協力して、経路の解明を急がねばならない。

 消費者は風評に惑わされないよう冷静に対処したい。行政や関係業者は、食の安全と安心の確保を第一に、着実に対策を進める必要がある。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040228ig91.htm