2004年02月28日(土) 15時58分
春秋(日経新聞)
それを逡巡(しゅんじゅん)や怠慢、あるいはついうっかりの初動ミス、と片づけていいのだろうか。鳥インフルエンザの拡大が心配されているとき、飼育中のニワトリの大量死を一週間も放置し、その間に生きたニワトリ1万5000羽を食肉用に出荷していた養鶏業者のことだ。
▼出荷したニワトリからインフルエンザの陽性反応が出たことで、この京都・丹波町の業者には厳しい批判が集まっている。当事者の社長は「20万羽も飼っていると、毎日50羽は死ぬのでつい……」と、苦しい弁解。しかし、26日には7000羽も死んでいるのに、保健所に匿名の通報があるまで、業者側は口をつぐんでいたという。
▼意図的な沈黙と、非難されてもしかたがない。大ごとになってニワトリや卵の出荷・移動を制限される前に、売れるものは今のうちに、という不届きな思惑は働いていなかったか——。目先の利に走ると、消費者の不信を広げ、逆に鶏肉市場全体の利を損なう。
▼オウムの一連の犯罪でも、坂本弁護士一家殺害事件で、初動の不手際や怠慢が指摘されている。神奈川県警がここでオウムの犯罪を暴いていれば、5年後、6年後のサリン事件は無かったともいわれる。県警幹部による誤った情報のリークなど、怠慢な捜査の背後にある真実を、今後の法廷でぜひ解明してほしい。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20040228MS3M2801328022004.html